冷却塔の性能低下は、単なる汚れや経年劣化だけではなく、水質・空気の流れの阻害・機械状態など、複数の要因が複合的に絡み合って発生します。そのため、表面的な対処だけでは根本的な改善につながらず、再発を繰り返すことも多いのが実情です。
性能低下の早期発見や設備の安定稼働に役立つ診断の考え方も含めて紹介しますので、ぜひ設備管理・保全業務にお役立てください。
産業用と空調用では、設備対象が異なります。冷却塔として性能低下 要因となる点は似ておりますが、対処方法等異なる可能性がありますので、 ご注意をお願いいたします。
1.リサーキュレーション(再循環やショートサーキット)及び他設備高温排気の吸込みによる冷却塔性能低下

主な要因
- 周辺設備などの壁・障害物で反射して吸込側へ回り込む。
- 他設備の排気ダクトから高温な気体が排気され、ルーバーから吸い込んでしまう。
- ファン性能低下に伴う、吐出風速の減少。
対策
- 設計段階より周囲の壁などにより、冷却塔からの吐出空気が再循環しない場所に冷却塔の設置検討を行う。
- 冷却塔基毎の配置は、なるべく距離を取り配置を行う。
- ファンスタックの延長を行い、周囲の壁などより設置位置を高くする。
- 高温多湿の空気が壁などの跳ね返りにより、ルーバーから吸い込まない様、抑制を行う。
- 空気の流れを整える
- ファン効率を向上させる
- 騒音を低減する
といった役割を担っております。
- ファン性能(風量)が低下しているようであれば、ファン更新や整備を検討する。
- 翼車ブレードの羽根角度調整を行い、ファン吐出風速UPさせる。
- 塔上に防音壁のような壁を設ける。
2.散水不均一(散水偏り)による熱交換効率の低下
充てん材への散水不均一が起こると、熱交換率が下がってしまい、冷却塔性能低下が引き起こされます。
主な要因
- 上部水槽(散水配管)孔、ノズルの閉塞により、充てん材への散水が不均一となる。
- 上部水槽、散水配管、ノズルの破損に伴い、充てん材への散水が不均一となる。
- バルブ調整不足に伴い、各水槽への循環水量にバラツキが発生する。
- 循環水ポンプ故障などに伴う、循環水量低下に伴う散水不均一が発生する。
対策
- 定期的な上部水槽、散水配管、ノズルの清掃。
- バルブ調整を行う。
- 上部水槽、散水配管、ノズルなどの破損品交換を行う。
- 上部水槽に異物が混入しないよう、ストレーナーの設置を行う。
- 薬品等を使用し、適切な水質管理を行う。
3.充てん材及びエリミネーター目詰まりによる冷却塔性能低下
主な要因
- 充てん材にスケールやスライムが付着し、圧力損失が増加することによるファン風量低下。
対策
- 高圧洗浄等でスケール等の除去(破損には十分注意して実施する)。
※スケールの付着は、水による洗浄(フィルム充填材が許容できる圧力が低い)では除去できないため、概ね充填材の更新が必要になります。
一般的な高圧洗浄圧力(4~7 kg/cm2:0.4~0.7 MPa)では、強度的にフィルム式充填材は耐え得る事ができないので注意が必要です。 - 適切な水質管理の実施 。
4.ファン性能(風量)低下に伴う冷却塔能力低下
4-1翼車ブレード
①翼車ブレード取付ボルトトルク管理不足によって、ファン風量が低下し、冷却塔性能低下を引き起こす可能性があります。
主な要因
- 翼車ブレード取付ボルトのトルク管理不足によって、翼角度がズレる事に伴う、ファン風量低下。
対策
- 翼車ブレードピッチ角点検の実施。
- 定期的な翼車ブレード取付ボルトのトルク管理の実施。
②翼車ブレード表面の堆積物によるファン性能低下。
主な要因
- 翼車ブレード表面に冷却水由来の異物・スケール・スライム等が堆積した場合、 ファン効率を低下させ、冷却塔能力低下につながる可能性があります。
対策
- 年次点検時に、ブレード表面の汚れ状況を確認し、必要に応じて清掃を実施する。
③翼車ブレードとファンスタック(ケーシング)チップクリアランスが大きい事によるファン風量低下。
この隙間が大きくなると、翼車の効率が低下し、ファン回転数が正常であっても設計風量を確保できなくなります。
主な要因
- ファンスタックがFRP製の場合、長期使用による劣化による変形を起こし、チップクリアランスが増加する。
- ボルトのゆるみによるチップクリアランスの増加。
- 据え付け工事中のチップクリアランス調整不足。
対策
- ファンスタックの取り換えを行う。
- ボルトの増し締めを行う。
- ファンスタックの再取付し、チップクリアランスの調整を行う。
4-2電動機不具合に伴うファン風量低下
電動機不具合により電動機回が転数減少し、ファン風量が低下し、冷却塔性能低下を引き起こす可能性があります。
主な要因
- 電圧低下
- コイル絶縁劣化
- ベアリング損傷
- 冷却フィン閉塞
対策
- 電動機のオーバーホールまたは交換を実施する。
4-3減速機不具合に伴うファン風量低下
減速機不具合により動力伝達効率低下し、ファン風量が低下し、冷却塔性能低下を引き起こす可能性があります。
主な要因
- ギヤ摩耗
- オイル漏れによる潤滑油不足
- ベアリング及びギヤ損傷
対策
- 減速機のオーバーホールor交換を実施する。
5.循環水量が設計値と比べ大幅なズレがあることに伴う冷却塔性能低下
循環水量が設計値より多すぎる場合は、充てん材面積当たりの水量が多すぎて、熱交換率が大幅に減少します。
また循環水量が少なすぎると、充てん材への散水が満遍なく行きわたらずに、熱交換率が低下します。
主な要因
- 循環水量の過多・過少による熱交換率の低下
- 循環水ポンプ故障などに伴う、循環水量低下に伴う熱交換率の低下
対策
- 循環水量が設計の±10%程度となるように調整を行う。
- 循環水ポンプの整備、交換を行う。
6.下部水槽の水位低下に伴う冷却塔性能低下
下部水槽の水位が低いと、エアーがバイパスし、充てん材を通る風量が減少し、冷却塔性能低下を引き起こします。
主な要因
- 下部水槽の水位低下
対策
- 下部水槽の水位をコンクリート梁下端(エアーバイパス防止用垂れ壁)まで 上げる。
7.冷却塔入口温度が設計入口温度(耐熱温度)よりも高い事に伴う冷却塔性能低下
充てん材耐熱温度以上の循環水が散布されると、充てん材が座屈を起こし、熱交換率が低下します。
主な要因
- 冷却塔入口温度が設計入口温度(耐熱温度)以上の温度で運用されている。
対策
- プラント熱負荷の運用方法見直し 。
- 耐熱用充てん材へ取り換える。
8.ルーバー面の凍結(寒冷地)
冷却塔ルーバー面が凍結していると、充てん材への風量が低下し、性能低下の要因となります。
また、つらら等で充てん材が破損し、性能低下を引き起こします。
主な要因
- ルーバー部の凍結
- つらら等の落下による充てん材の破損
対策
- 散水不均一の改善
※散水が多い箇所は、つららが形成されやすくなります。散水が不均一にならない様に、定期的な上部水槽、散水配管、ノズルの清掃、破損部品の交換、バルブ調整をお願いいたします。 - サイクリック運転の実施
※サイクリック運転:送風機が複数台ある場合、送風機を1台(設備上可能であれば複数台)停止し、自然冷却を行います。
停止したセルは、循環水が冷却 れずに温水のまま落水する為、ルーバー面の凍結を解凍する事が可能です。 - ファン逆転運転の実施(低速運転かつ短時間にて実施)
※ファンを逆回転させる事により温められた空気をルーバーに吹付けて氷柱を解凍させます。
※逆転運転が可能かどうかどうかは、各冷却塔メーカーへ確認する必要があります。
まとめ
冷却塔の性能低下は、汚れや経年劣化といった単純な問題ではなく、リサーキュレーションや散水不均一、充てん材の目詰まり、風量低下など複数の要因が複雑に絡み合って発生します。
本資料では、こうした見落とされがちな要因を体系的に整理し、対策を提示しています。
設計・運用・保全の各段階で適切な対応を行うことで、冷却性能の安定化だけでなく設備の長寿命化にもつなげることも可能です。 加えて冷却塔の取扱説明書もご確認頂き、適切な管理の実施をお願いいたします。