冷却塔性能低下の要因とその対策

冷却塔は、空調設備や生産設備において重要な役割を担う装置です。冷却塔の性能低下は、単なる汚れや経年劣化だけでなく、水質、空気の流れの阻害、機械の状態など、複数の要因が絡み合って発生します。そのため、表面的な対処だけでは根本的な改善につながらず、性能低下を繰り返すことも少なくありません。
ここでは、見落とされやすい要因を整理し、現場で実践できる対策を体系的に解説します。性能低下の早期発見や設備の安定稼働に役立つ診断の考え方も紹介しますので、設備管理や保全業務にお役立てください。
本記事では、空調用ではなく、産業用冷却塔を対象に解説します。産業用冷却塔と空調用冷却塔では、冷却対象となる設備や運転条件が異なります。性能低下の要因には共通する部分もありますが、設備によって適切な対処方法が異なる可能性があるため、あらかじめご了承ください。

リサーキュレーションや高温排気の吸込みによる性能低下

冷却塔の排気リサーキュレーションを示した図
※リサーキュレーション(再循環・ショートサーキット)とは、冷却塔から吐出された高温・高湿の排気が、再び吸込み側へ戻る現象です。吸込み空気の温度や湿度が上昇することで、冷却塔の性能低下を引き起こします。

主な要因

  • 吐出空気が周辺設備の壁や障害物に当たり、吸込み側へ回り込む。
  • 他設備の排気ダクトから排出された高温の空気を、冷却塔のルーバーから吸い込んでしまう。
  • ファン性能の低下によって吐出風速が減少する。

対策

  • 設計段階で周囲の壁や障害物の影響を考慮し、吐出空気が再循環しにくい場所への設置を検討する。
  • 複数の冷却塔を設置する場合は、塔同士の間隔をできるだけ確保する。
  • 高温・高湿の空気が壁などで跳ね返り、ルーバーから再び吸い込まれないように気流を調整する。
  • ファンスタックを延長し、吐出口を周囲の壁や障害物より高い位置にする。
※ファンスタックとは、冷却塔上部に設置され、軸流ファンの周囲を囲む円筒状の整流ダクトです。設備やメーカーによっては、ケーシングと呼ばれることもあります。空気の流れを整え、ファン効率の向上や騒音の低減を図る役割があります。
  • ファン性能や風量が低下している場合は、ファンの整備または交換を検討する。
  • 翼車ブレードの取付角度(ピッチ角)を調整し、ファンの吐出風速を向上させる。
  • 必要に応じて、塔上に防音壁などの気流対策設備を設ける。

散水不均一による熱交換効率の低下

充てん材への散水に偏りが生じると、熱交換効率が低下し、冷却塔の性能低下につながります。

主な要因

  • 上部水槽や散水配管の散水孔、ノズルが閉塞し、充てん材への散水が不均一になる。
  • 上部水槽、散水配管、ノズルの破損によって、充てん材への散水に偏りが生じる。
  • バルブの調整不足によって、各水槽への循環水量にばらつきが生じる。
  • 循環水ポンプの故障などによって循環水量が低下し、散水に偏りが生じる。

対策

  • 上部水槽、散水配管、ノズルを定期的に清掃する。
  • バルブを調整し、各水槽への循環水量を均一にする。
  • 破損した上部水槽、散水配管、ノズルなどを交換する。
  • 上部水槽への異物混入を防ぐため、ストレーナーを設置する。
  • 薬品などを使用し、適切な水質管理を行う。

充てん材・エリミネーターの目詰まりによる性能低下

充てん材やエリミネーターの表面が、スケールやスライムの付着によって閉塞すると、水と空気の接触面積が減少し、冷却塔の性能低下を引き起こします。

主な要因

  • 充てん材にスケールやスライムが付着し、圧力損失が増加することでファン風量が低下する。

対策

  • 適切な水質管理を実施する。
  • 高圧洗浄などによってスケールを除去する。ただし、充てん材の破損に十分注意して実施する。
※付着したスケールは、水による洗浄だけでは十分に除去できない場合があります。また、フィルム式充てん材は許容できる洗浄圧力が低いため、状態によっては充てん材の交換が必要です。一般的な高圧洗浄圧力である4~7 kg/cm²(0.4~0.7 MPa)は、フィルム式充てん材の許容圧力を超える可能性があるため、注意が必要です。

ファン性能や風量の低下による性能低下

1.翼車ブレードに関する不具合

1-1.取付ボルトの締付トルク不足

翼車ブレード取付ボルトの締付トルクが適切に管理されていない場合、取付角度(ピッチ角)にずれが生じ、ファン風量や冷却塔の性能が低下する可能性があります。
主な要因
  • 翼車ブレード取付ボルトの締付トルク不足によって、取付角度(ピッチ角)がずれる。
  • 取付角度(ピッチ角)のずれによって、ファン風量が低下する。
対策
  • 翼車ブレードの取付角度(ピッチ角)を点検する。
  • 翼車ブレード取付ボルトの締付トルクを定期的に確認する。

1-2.翼車ブレード表面への堆積物

主な要因
  • 翼車ブレード表面に、循環水由来の異物、スケール、スライムなどが堆積し、ファン効率が低下する。
  • ファン効率の低下によって、冷却塔の性能が低下する。
対策
  • 年次点検時にブレード表面の汚れを確認し、必要に応じて清掃する。

1-3.チップクリアランスの増大

※チップクリアランスとは、翼車ブレード先端とファンスタック内面との隙間です。この隙間が大きくなると翼車の効率が低下し、ファン回転数が正常であっても設計風量を確保できなくなります。
主な要因
  • FRP製ファンスタックが長期使用によって劣化・変形し、チップクリアランスが増大する。
  • ボルトの緩みによってチップクリアランスが増大する。
  • 据付工事時の調整不足によって、適切なチップクリアランスが確保されていない。
対策
  • 変形や劣化が確認されたファンスタックを交換する。
  • ボルトの増し締めを行う。
  • ファンスタックを取り付け直し、チップクリアランスを調整する。

2.電動機の不具合によるファン風量の低下

電動機の不具合によって回転数が減少すると、ファン風量が低下し、冷却塔の性能低下を引き起こす可能性があります。

主な要因

  • 電圧の低下
  • コイルの絶縁劣化
  • ベアリングの損傷
  • 冷却フィンの閉塞

対策

  • 電動機のオーバーホールまたは交換を実施する。

3.減速機の不具合によるファン風量の低下

減速機の不具合によって動力伝達効率が低下すると、ファン風量が低下し、冷却塔の性能低下を引き起こす可能性があります。

主な要因

  • ギヤの摩耗
  • オイル漏れによる潤滑油不足
  • ベアリングまたはギヤの損傷

対策

  • 減速機のオーバーホールまたは交換を実施する。

循環水量の過多・過少による性能低下

循環水量が設計値より多すぎる場合は、充てん材の単位面積当たりの水量が過剰となり、熱交換効率が低下します。また、循環水量が少なすぎる場合は、充てん材全体に水が行き渡らず、熱交換効率が低下します。

主な要因

  • 循環水量が設計値に対して多すぎる、または少なすぎる。
  • 循環水ポンプの故障などによって循環水量が低下する。

対策

  • 循環水量が設計値の±10%程度に収まるよう調整する。
  • 循環水ポンプを整備または交換する。

下部水槽の水位低下による性能低下

下部水槽の水位が低いと、空気が充てん材を通らずにバイパスし、充てん材を通過する風量が減少します。その結果、冷却塔の性能低下を引き起こします。

主な要因

  • 下部水槽の水位が適正値より低下している。

対策

  • 下部水槽の水位を、コンクリート梁下端のエアバイパス防止用垂れ壁まで上げる。

入口水温が設計温度を超えることによる性能低下

充てん材の耐熱温度を超える循環水が散水されると、充てん材が座屈し、熱交換効率が低下します。

主な要因

  • 冷却塔入口温度が、設計入口温度または充てん材の耐熱温度を超えている。

対策

  • プラントの熱負荷や運転方法を見直す。
  • 耐熱仕様の充てん材へ交換する。

ルーバー面の凍結による性能低下

寒冷地では、冷却塔のルーバー面が凍結すると、充てん材を通過する風量が低下します。また、つららなどの落下によって充てん材が破損し、性能低下を引き起こす可能性があります。

主な要因

  • ルーバー面の凍結
  • つららなどの落下による充てん材の破損

対策

  • 散水不均一を改善する
    ※散水量が多い箇所では、つららが形成されやすくなります。散水の偏りを防ぐため、上部水槽、散水配管、ノズルの定期清掃、破損部品の交換、バルブ調整を実施してください。
  • サイクリック運転を実施する
    ※送風機が複数台ある場合は、設備上可能な範囲で一部の送風機を停止し、自然冷却を行います。停止したセルでは、冷却されていない温水が落水するため、その熱によってルーバー面の凍結を解消できる場合があります。
  • ファンの逆転運転を実施する
    ※ファンを低速かつ短時間で逆回転させ、温められた空気をルーバーへ送ることで、氷やつららを解かします。逆転運転の可否や運転条件については、事前に冷却塔メーカーへ確認してください。

まとめ

冷却塔の性能低下は、汚れや経年劣化といった単純な問題だけでなく、リサーキュレーション、散水不均一、充てん材の目詰まり、風量低下など、複数の要因が絡み合って発生します。本記事では、こうした見落とされやすい要因を体系的に整理し、それぞれの対策を紹介しました。
設計・運用・保全の各段階で適切に対応することで、冷却性能の安定化だけでなく、設備の長寿命化にもつながります。あわせて冷却塔の取扱説明書をご確認いただき、設備の仕様や運転条件に応じた適切な管理を実施してください。