薬注装置一体型の冷却塔とは?役割・機能・性能を紹介

冷却塔(クーリングタワー)は日々、送られてくる温められた水を冷やすという役割を繰り返し行っています。
水に含まれるカルシウムやマグネシウム、シリカなどが濃縮することにより冷却塔内に析出するとスケール障害が起こり、冷却塔内部やパイプ、コンデンサー等が腐食したりする恐れがあります。
このような被害は定期的な清掃だけでは防げないため、水をきれいに保つための薬剤投下が必要です。

一般的な冷却塔では薬剤を注入する装置や投下する薬剤を入れておくタンクなどを設置しなくてはなりません。
その分、設置スペースが必要となり、設備を購入するコストや基礎工事も必要となります。

こうした課題を解決してくれるのが、薬注装置一体型の冷却塔です。
薬注装置一体型の冷却塔とはどんなものなのか、従来の冷却塔との違いを説明しながら、役割・機能・性能をご紹介していきます。

薬注装置一体型の冷却塔とは

薬注装置一体型の冷却塔とは、薬注装置を内蔵した冷却塔(クーリングタワー)です。

薬注装置一体型の冷却塔は薬注装置を別に設置するタイプと比べて省スペースとなるため、冷却塔の設置スペースが限られている場合に適しています。
薬注装置を設置するための基礎工事が不要であるため短納期での納入が可能となります。
薬注装置を別途購入する費用や設置工事の費用を抑えることができるため、イニシャルコストを低くすることができます。

薬注装置一体型の冷却塔の役割

冷却塔(クーリングタワー)の薬注装置は、冷却水を常に最適な状態に保つ装置です。
冷却塔の薬注装置には冷却水管理装置や冷却水管理システムといったさまざまな名称がありますが、基本的な機能や仕組みは同じです。

そもそも、なぜ冷却塔には薬注装置が必要となるのでしょうか。

冷却水には、水道水や地下水などに含まれるマグネシウムやカルシウムなどの硬度成分やシリカなどが混ざっています。
冷却水が蒸発する際に、硬度成分やシリカがスケール化する場合があります。

スケールが冷却塔内部や配管、熱交換器などに付着すると、熱交換効率を低下させるため注意しなくてはなりません。
熱交換効率の低下はエネルギーロスの原因となり、環境にもよくありません。

また、ポンプ圧の上昇、流量の低下など、設備の安定運転に支障をきたす場合もあるので、スケールの発生を抑える必要があります。
さらにスライムが発生することで冷却水が汚れ、冷却塔や配管などの設備が閉塞する恐れもあります。

スケールやスライムの発生を抑え、障害を防ぐ薬注装置は冷却塔の水質管理に必要不可欠な存在です。
薬剤には防食剤も含まれるため、腐食に対する効果も見込めます。

薬注装置一体型の冷却塔の導入なら空研工業

薬注装置一体型の冷却塔の仕組み

従来型の冷却塔(クーリングタワー)に付属して設置される薬注装置にもさまざまなタイプがありますが、一般的な仕組みは次の通りです。
薬剤を入れる薬品タンク、冷却水処理薬剤を注入する薬注ポンプ、そして、自動ブロー機能装置で構成され、水の導電率を管理して冷却水の水質が悪化すると自動で水をブローしてきれいな水に入れ替えます。(ボールタップにより補給されます。)

具体的には薬剤タンク、薬注ポンプ、自動ブロー装置、電動ブローバルブ、パルス発信式流量計といった機器をユニット化したものが、薬注装置一式となります。
薬注装置だけでも、それなりの大型ユニットとなるため、設置スペースが必要となり、設置工事の手間やコストがかかるのが一つの課題でした。

しかし、薬注装置一体型の冷却塔の場合、冷却塔の内部に薬注装置が埋め込まれているため省スペースであり、冷却塔の設置工事だけで済みます。

この点、従来型は薬剤のタンクの大きさの選定も、重要な検討課題となりました。
小さすぎると頻繁に薬剤の補充が必要となり、大きすぎれば過剰設備として設備の購入費用に無駄が生じるためです。
そのため、月間に必要となる薬剤使用量をあらかじめ計算して、必要量をストックできるサイズのタンクを選定することが必要でした。

薬注ポンプは冷却水処理剤という薬剤を冷却水に投入する装置です。
冷却水処理剤は水中で薬剤の濃度を一定に保つ必要があります。
冷却塔に補給される水の量に対し、常に薬剤濃度を維持する必要があります。
そのため、薬注ポンプは注入量のバラつきを発生させないために、定量性があるダイヤフラム式のポンプを使用します。

薬注装置一体型の冷却塔は、こうした従来の薬注装置ユニットの役割を冷却塔内で一括処理することができます。

薬注装置一体型の冷却塔の方式

薬注ポンプの注入方法には、タイマー注入方式と流量比例注入式という2つの方法があります。

1つ目のタイマー注入式はあらかじめ時間を設定しておき、設定した時間になると自動的に薬剤が注入されるという方法です。
1時間ごとに1分間だけ薬注ポンプが作動するといったように、注入するタイミングと注入時間の設定ができます。
薬剤が注入されたときは一時的に薬剤濃度が高くなりますが、その後の水の入れ替わりなどによって徐々に濃度が低下していきます。
夏と冬では水の蒸発量に差があるため、季節によってタイマーの設定変更を行う必要があります。

2つ目の流量比例注入式は冷却塔(クーリングタワー)の補給水の量をパルス発信式流量計で計測し、パルス信号で薬注ポンプを動かすという方法です。
補給水の補給量に応じて薬剤が注入されるため、冷却水中での薬剤濃度が常に一定に保たれ、薬剤の無駄を抑えることができます。

薬注装置一体型の冷却塔はメーカーによって、週間タイマー方式、定期的な間隔を置くインターバル方式、流量比例方式などさまざまな薬剤の注入方法があります。

薬注装置一体型の冷却塔の構造

薬注装置一体型の冷却塔は、薬注装置が冷却塔に内蔵される構造で、センサーや薬注ポンプもあらかじめ冷却塔(クーリングタワー)に接続されています。

そのため、センサーや薬注ポンプなどを接続する工事が不要となります。
内臓された装置一つで、薬注ポンプの自動制御と冷却水の濃度管理を行うことができます。

まとめ

冷却水や補給水などに含まれるミネラル成分やシリカによって発生するスケールや外気から持ち込まれるスライムなどによる冷却塔(クーリングタワー)や配管の腐食、効率ダウンといったトラブルを防ぐために、冷却塔内の水を最適な状態に保つための薬剤を注入する必要があります。

それが、薬注装置です。

従来は薬剤タンク、薬注ポンプ、自動ブロー装置、電動ブローバルブ、パルス発信式流量計といった装置で構成されるユニット機器を、別途冷却塔に接続させる必要がありました。
その分、広い設置スペースが必要となり、設置工事の手間やコストもかかっていました。

これに対して、薬注装置一体型の冷却塔は薬注装置が内臓されている冷却塔です。
薬注装置を内蔵しているため省スペースで、薬注装置の基礎工事も不要となるため、施工の手間やコストを抑えることができます。

薬剤は自動的に注入され、注入方法はメーカーによってさまざまあります。
短工期で低コスト、薬注装置と冷却塔を同時に管理することでメンテナンスをする手間も省けるのがメリットです。

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