大型冷却塔送風機の振動問題とは?主な要因と解決方法を解説

工場やプラントで使われる大型冷却塔(クーリングタワー)では、送風機の振動トラブルが設備管理上の悩みの種になりがちです。本記事では、大型冷却塔送風機の振動問題について、機器構成をふまえた主な要因、測定による切り分け方、そして解決と再発防止のポイントを、現場の視点からわかりやすく解説します。

大型冷却塔送風機の構成と振動が起こりやすい理由

産業用の大型冷却塔では、電動機の動力を中間軸(長い駆動シャフト)で減速機(ギヤボックス)へ伝え、大径の翼車(ファン)を低速で回す「ベベルギヤ駆動方式」が広く採用されています。空調用冷却塔で一般的なVベルト駆動方式に比べて構成機器が多く、電動機・中間軸・減速機・翼車の各部が振動の発生源になり得ます。
また、冷却塔内は水分を含んだ空気にさらされやすい湿潤環境です。海沿いのプラントでは、塩分を含んだ雰囲気にさらされることもあります。回転する翼車にはスケール(水中の成分が固着したもの)や藻類が付着しやすく、金属部品は腐食が進みやすい環境と言えます。
さらに、送風機は塔体上部の架台に据え付けられます。塔体や架台の剛性が経年で低下すると、送風機自体は健全でも振動が大きく現れることがあります。つまり大型冷却塔送風機の振動問題では、「回転機械」と「構造物」の両方を疑う必要がある点が大きな特徴です。

振動の主な要因を機器別に整理

翼車(ファン)

現場で最もよく出会うのが、翼車の不平衡(アンバランス)による冷却塔の横揺れ現象です。回転体の重心が回転中心からずれた状態を指し、翼車ブレードへのスケールや藻の付着、金属腐食による減肉、FRP(繊維強化プラスチック)ブレードの摩耗などの質量変化が原因になります。運転とともに付着物・減肉・摩耗は進展するため、「振動が徐々に大きくなってきた」というケースでは、まず疑いたい要因です。
なお、質量バランスが取れていても、翼のピッチ角(取付け角度)に翼ごとの差があると空気力の不均一で振動が生じることがあり、これは「空力的な不平衡」と呼ばれます。質量バランス修正だけでは解消しない点が厄介です。

中間軸・カップリング

大型冷却塔では電動機と減速機の間が離れているため、長い中間軸と、金属製のたわみ板継手を用いた2組のカップリングにより動力を伝えます。軸どうしの中心を合わせる「芯出し」が不十分だとミスアライメント(軸心のずれ)となり、軸方向の振動が特徴的に現れます。
また、中間軸には動バランス調整が施されており、バランスウェイトが取り付けられています。このバランスウェイトが腐食・減肉すると中間軸の釣合いが崩れ、振動が大きくなります。カップリングのたわみ板(エレメント)は消耗部品であり、劣化や損傷が振動・異音につながることもあります。そのため、定期交換部品として管理するのが安全と考えられます。

減速機

歯車のかみ合い異常、軸受の損傷、潤滑油の劣化・不足が主な要因です。かみ合いに問題があると、歯数と回転速度で決まる特有の周波数(かみ合い周波数)の振動が現れます。オイル交換の履歴がはっきりしない減速機では、潤滑起因の劣化をまず疑うのが現場の定石です。

電動機

軸受(ベアリング)の劣化のほか、電磁的な要因による振動、据付面の不陸により脚部が浮いた状態(ソフトフット)などが挙げられます。電磁振動は電源周波数の2倍の周波数成分に現れやすく、電源を切った瞬間に振動が消えるかどうかで、機械的な要因と切り分けられます。

塔体・架台(構造系)

架台の剛性低下、アンカーボルトの緩み、共振が代表的です。共振とは、構造物の固有振動数(揺れやすい周波数)と回転に伴う加振周波数が近接して振動が増幅される現象です。「以前からずっと振動が大きい」・「特定の運転条件のときだけ振動が大きくなる」場合は、構造側の要因も視野に入れる必要があります。

振動の測定と要因の切り分け方

振動は、変位・速度・加速度という3つの物理量で測定します。一般的な目安として、低い周波数(~10Hz)の構造的な揺れは変位[μm(P-P)]、不平衡やミスアライメントなど中間の周波数帯(10Hz~1kHz)は速度[mm/s(rms)]、軸受や歯車の損傷に伴う高い周波数(1kHz~)は加速度[m/s2(0-P)]で捉えるのが適しているとされています。
現場での診断は、「まず変位・速度で設備全体の異常の有無をつかみ、加速度で軸受部などの局部を確認し、FFT解析で要因を特定する」という流れが基本です。FFT解析とは振動波形を周波数ごとの成分に分解する手法で、「どの周波数の振動が大きいか」から要因を推定できます。

特性周波数の考え方(1X・2X・3X成分とは)

FFT解析で手掛かりになるのが図1・表1のような「特性周波数」です。軸の回転速度[min⁻¹]を60で割った値が回転1次成分(1X)で、その整数倍を2次成分(2X)・3次成分(3X)と呼びます。これに翼枚数から決まるブレード通過周波数(BPF)、歯数から決まる歯車かみ合い周波数(GMF)、電源周波数の2倍に現れる電磁振動を加えたものが、注目すべき代表的な周波数です。

図1.冷却塔送風機構成図
表1.送風機の主な特性周波数(計算例)
成分 求め方 計算例 備考
電動機回転周波数 1X 回転速度[min⁻¹]÷60 1,160 min⁻¹ → 19.33 Hz 6P・60Hz地区の例
電動機回転周波数 2X 1X×2 38.66 Hz ミスアライメントで注目
電動機回転周波数 3X 1X×3 57.99 Hz 高調波の一例
翼車回転周波数 1X 電動機1X÷減速比 減速比3.556 → 5.43 Hz 低周波数帯
翼車回転周波数 2X・3X 翼車1X×2、×3 10.86 Hz、16.29 Hz いずれも低周波数帯
ブレード通過周波数 BPF 翼枚数×翼車1X 6枚 → 32.58 Hz 塔体側で注目
歯車かみ合い周波数 GMF 歯数×対象軸の1X 歯数は減速機仕様から調査 側帯波もあわせて確認
電磁振動 電源周波数×2 60Hz地区 → 120 Hz 50Hz地区は100 Hz
※計算例の数値は説明用の一例です。実際の値は各設備の仕様(回転速度・減速比・翼枚数・歯数)から算出してください。
ここで注意したいのが、複数の機器が異なる速度で回転している点です。同じ「1X」でも、電動機の1Xと翼車の1Xでは周波数が一桁異なります。測定記録では「どの機器の1Xか」を必ず明記しておくと、後の分析での混乱を防げます。

周波数成分から要因を推定する

FFT解析でどの成分が目立つかが分かれば、表2のような対応関係から要因の当たりを付けられます。ただし、周波数が一致しただけで要因を断定せず、発生方向(垂直・水平・軸方向)や振動の変化傾向とあわせて総合的に判断することが大切です。
表2.FFTで目立つ周波数成分と主に疑われる要因
FFTで目立つ成分 主に疑われる要因
1Xが単独で卓越(水平方向) 翼車の不平衡(付着物・腐食・摩耗)
1X+2X(特に軸方向) ミスアライメント、軸曲がり、カップリングの異常
1Xの多数次成分や1/2X等の分数次成分 ガタ・緩み・据付不良
ブレード通過周波数BPFとその高調波(垂直方向) 塔体との共振・剛性低下
歯車かみ合い周波数GMFとその側帯波 歯車のかみ合い異常・摩耗
軸受の損傷特性周波数(高周波・加速度で確認) 軸受の内輪・外輪・転動体の傷
電源周波数の2倍(100/120 Hz) 電動機の電磁振動
※軸受の損傷特性周波数は、軸受の定数(寸法諸元)と回転速度から損傷部位ごとに算出できます。しかし、同型式の軸受でも製造メーカにより軸受定数が異なる場合があること、既存機器に組込まれている軸受の製造メーカの特定に至らない場合があることから、損傷部位を推定するための診断指標として評価しております。

振動の判定基準の考え方

測定値の良否判定は、絶対判定法として、冷却塔メーカが機種ごとに定めた管理値を優先します。メーカ管理値が入手できない場合はISO規格の速度基準値も目安になりますが、電動機出力(kW)や据付条件によって適用する基準値が異なる為、参考にとどめるのが安全です。その他に、初期/正常時の計測値(のn倍)を基準とする相対判定法や、同一仕様機器同士の計測値を比較する相互判定法があります。(表3)
表3.測定値の判定方法
判定法 内容 備考
絶対判定法 メーカ管理値やISO(JIS)規格を基準とする 機器仕様により適用値が異なる
相対判定法 初期/正常時の計測値(のn倍)を基準とする 初期/正常時の計測値が必要
相互判定法 同一機器同士の計測値を基準とする 同一仕様機器が必要
なお、重要なのは、初期状態からどのように振動値が推移してきたかを掴んでおく事(傾向管理)です。現状値が絶対値として小さくても、初期値の2倍・3倍に達していれば、何らかの異常の進行を疑うべきです。このような初期値を基準値として、そこから何倍になったかで注意域・危険域を判定する方法を上記表の相対判定法と呼び、一般的に初期/基準値の「2倍以上で注意(警報)領域」、「4倍以上で危険(停止)領域」が目安となっております。以上の様な管理をすれば、振動値の推移から故障発生時期を推定でき、保全アクションを計画的に起こす事が可能となります。これは予知保全の一手法である「CBM(状態監視保全)」にあたります。納入以後の顧客様による設備管理は、この「CBM」を実施頂くことが重要となります。

振動問題の解決方法と再発防止のポイント

対処は要因に応じて行います。翼車の不平衡なら、工場持込み整備によるバランス調整、もしくは現地でのバランス修正(フィールドバランス)と翼車の清掃が基本で、付着物が主因の場合は清掃だけで改善することも少なくありません。中間軸ミスアライメントは芯出しの再調整、バランスウェイト腐食・減肉は中間軸の更新、たわみ板の劣化は交換、軸受・歯車の損傷が疑われる場合は、整備工場への持込みによるオーバーホールで対処します。ボルト緩みや剛性低下には増締め・腐食部の補修・架台の補強が有効です。
また、昨今では定修期間の短縮等により、整備期間を以前のように確保できない場合もあり、予備機として電動機・減速機を事前に手配される顧客様もいらっしゃいます。
再発防止の鍵は日常管理にあります。水質管理による付着・腐食の抑制、グリース給脂・オイル交換の記録化、消耗部品の計画的な交換、そして定期的な振動測定による傾向管理です。「壊れてから直す」のではなく「変化の兆しをつかんで計画的に手を打つ」ことが、結果として設備の停止時間とコストを抑えることにつながります。

まとめ

大型冷却塔送風機の振動は、翼車・中間軸・減速機・電動機といった機器側と、塔体・架台の構造側の両面から要因を検討する必要があります。1X・2X・BPFといった特性周波数を手掛かりにFFT解析で要因を切り分け、メーカ管理値と傾向管理で判定し、計画的な保全につなげることが安定運転への近道です。