産業用冷却塔のルーバーにできる氷柱の原因と対策・注意点

冬期に冷却塔を運転すると、空気取入口のルーバーに着氷し、氷柱が成長することがあります(特に寒冷地)。氷柱を放置すると、ルーバー面が閉塞していきます。ルーバー面が閉塞すると、充てん材への風量が低下し、熱交換に必要な空気量が確保出来ず、冷却塔の性能低下を引き起こします。また、氷柱が落下し、ルーバーや充てん材が破損する恐れがあります。

本記事では、ルーバーに氷柱が出来た場合の対策方法及び注意事項について解説致します。本記事はあくまで、空調用冷却塔ではなく、産業用冷却塔に関する記事となります。産業用と空調用では、設備対象が異なります。要因となる点は似ておりますが、対処方法等異なる可能性がありますので、ご注意をお願い致します(詳細については、各冷却塔製造メーカーへのお問い合わせをお願い致します)。

冬期の冷却塔ではなぜルーバーに着氷するのか

冷却塔では、循環水と外気を接触させ、水の一部を蒸発させることによって循環水を冷却します。外気温度が低下すると、ルーバー付近を流れる水が冷やされ、ルーバーの羽根や支持部に着氷する場合があります。

特に注意が必要なのは、冷却塔の熱負荷が小さい状態で通常通りに送風機を運転している場合です。外気温度が低い中で必要以上に送風機を運転し続けると、循環水が過度に冷却され、ルーバー面の着氷が進みやすくなります。

ルーバー着氷を放置した場合の影響

1. 充てん材への風量が減少し、冷却塔性能が低下する

ルーバー面が氷柱で閉塞すると、冷却塔内へ吸い込まれる空気量が減少します。その結果、充てん材を通過する熱交換に必要な空気量が確保出来ず、冷却塔本来の性能を発揮できなくなる可能性があります。

氷柱の成長によって空気の流れが偏った場合も、凍結していない部分へ空気が集中するため、セル内の風量分布にも偏りが生じ、冷却塔本来の性能を発揮出来なくなる可能性があります。冷却塔出口水温だけで管理するのではなく、現場に出向き、ルーバー面全体を目視し、氷柱の位置と広がりを把握する必要があります。

2. 氷柱の落下により内部部材が破損する

ルーバー着氷を放置すると、氷柱へと徐々に成長していきます。その氷柱が落下すると、ルーバー羽根、構造材、充てん材、水切り板などを損傷させる恐れがあります。寒冷地での設計においては、氷柱が落下し、充てん材やルーバー羽根に氷柱が直接当たるリスクを下げる為、ルーバーと充てん材の間に1m程度のクリアランスを設け、破損対策を施しております。

また、ルーバー面構造材(梁材)は、鋼管(角材などの部材よりも着氷する接触面積が少ない部材)を採用し、着氷しにくい対策も行っております。

3. 部材内部に入った水が凍結・膨張する

外から見える氷柱だけでなく、柱や部材内部に入った水にも注意が必要です。産業用冷却塔の主構造材は、中空形状の材料をメインに使用しております。雨水、雪解け水、循環水などが中空部材の内部に滞留した状態で凍結すると、水の膨張によって部材が変形・損傷する場合があります。このような事象を防ぐ為、柱の最下部に水抜き穴を設け、内部に水を滞留させない構造を採用しております。

ルーバー面に氷柱が出来た場合の対処方法

ルーバー面に氷柱が確認された場合は、無理に叩き落とすのではなく、冷却塔の運転状態と設備仕様を確認した上で、循環水や塔内の比較的温度が高い空気を利用して氷解することが基本となります。

1. 送風機を停止し、循環水を流して氷解する

氷柱を確認した場合は、まず対象セルの送風機を停止し、循環水の通水を継続します。送風機を停止すると、低温の外気による冷却が抑えられます。その為、循環水の温度が上がり、その循環水を流し続けることで、ルーバー付近の氷柱を徐々に解かします。ただし、送風機を停止することで冷却塔全体の冷却能力が低下します。

また、冷却塔の循環水温度が上がりすぎて、充てん材やエリミネーターなどの耐熱温度以上になっていないかも注意をしていく必要があります。したがって、循環水温度や冷却対象設備の運転状態を監視し、必要な冷却能力を維持できる範囲で実施する必要があります。

2. 冷却塔が複数セルの場合は、サイクリック運転を行う

複数セルで構成される冷却塔では、ルーバー面に着氷傾向が見られた場合、サイクリック運転によって氷解させる事が可能となります。

サイクリック運転とは、複数ある送風機の一部を停止し、停止セルには循環水を流したままとする運転方法です。送風機を停止したセルでは、循環水が低温の外気によって過度に冷却されにくくなります。比較的温度の高い循環水をルーバー付近へ流すことで、氷解を可能にします。

停止セルの氷解が進んだら、そのセルの送風機を再起動し、別のセルの送風機を停止します。この切替えを順番に行うことで、残りの運転セルで一定の冷却能力を維持しながら、各セルの氷解が可能となります。

ただし、停止するセル数や切替えのタイミングを一律に決めることは出来ない為、循環水温度、冷却塔熱負荷、外気条件、着氷状態を確認し、必要な冷却性能を維持できる範囲で実施します。また、送風機を頻繁に発停させる場合は、電動機や翼車などの送風機関係のメーカーが指定する許容始動頻度(停止から再起動までの時間間隔及び始動回数)を守る必要がありますので、各冷却塔製造メーカーへお問い合わせをお願い致します。

サイクリック運転で解氷できない場合の送風機逆転運転

外気温度がさらに低下し、サイクリック運転だけでは氷解が追い付かない可能性があります。このような事が想定される場合には、送風機の逆転運転が更なる対策の一つとなります。(この場合、事前に各機器メーカーへの確認と同時に、インバータ設備の導入が必要です)

通常運転では、ルーバーから吸い込まれた空気が充てん材を通り、塔上部から高温多湿の空気が排出されます。送風機を逆転運転させると空気の流れが反対方向になり、塔内の高温多湿の空気がルーバー側へ送られます。この空気によって、ルーバーに付着した氷柱を解かすことが可能になります。

ただし、上述の通り、ルーバー面から排出された空気は、水分を含んでいる為、そのしぶきにより、冷却塔周囲が凍結する可能性があります。なお、ルーバー面から排出された白煙が道路上の視界を妨げる事もありますので、送風機逆転運転をする際は、十分注意が必要です。また、送風機はすべての冷却塔で自由に逆転運転できるわけではありません。

上述の通り、計画段階で、翼車、減速機、電動機などが逆転運転に対応しているかどうかを各冷却塔製造メーカーへ事前に確認し、インバータ設備の導入計画を行なった上で、インバータ運転にて最低回転数かつ短時間で逆転運転を実施いただきますよう、お願い致します。

飛散水と白煙にも注意する

冬期は外気温度が低く、冷却塔から排出される高温多湿の空気が外気と混ざった際に、空気中の水蒸気が微細な水滴へ凝結しやすくなります。また、外気との温度差によって白煙も発生しやすい時期となります。

冷却塔から排出された高温多湿の空気や水滴が、近接する周辺設備や樹木に付着すると、その表面が濡れ、外気温度や対象物の表面温度が低い場合には、付着した水滴は凍結します。水滴の付着が継続すると、周辺設備や樹木に氷柱が成長する可能性がありますので、冷却塔の立地には十分注意が必要となります。

冬期運転では着氷の早期発見が大切

氷柱対策で大切なのは、ルーバー面が完全に閉塞してから対応するのではなく、事前の対策計画と着氷の初期段階で発見することです。冬期運転時には、以下の項目を継続して確認します。

  • ルーバー羽根や支持部への着氷
  • つららの長さと太さ
  • セル毎の着氷範囲

着氷が確認されるようであれば、3-1、3-2で記載しました送風機を停止し、循環水のみで運転を行い、充てん材やルーバー羽根の変形・破損防止を行って頂きます様お願い致します。

まとめ

寒冷地の冷却塔では、ルーバー面の着氷を完全に防ぐことは困難です。

重要なのは、着氷を事前に想定・計画し、早期に対応するなど、着氷の成長をできる限り抑制することです。

まずは、送風機の停止を行います。冷却塔が複数セルの場合は、氷柱が見受けられるセルから順次送風機の運転を停止するセルを切り替えるサイクリック運転を実施頂き、それだけで氷解できない場合には、インバータ設備の事前導入により最低回転数かつ短時間での逆転運転の実施をお願い致します(冷却塔メーカーへは事前に逆転運転が可能かどうかの確認をお願い致します)。

各設備の特性を踏まえた冬期運転要領を整備し、安全性と冷却性能の両方を維持・管理していく事が長く冷却塔を取り扱う為に必要不可欠な事となりますので、今一度運転管理を見直して頂きます様、宜しくお願い致します。

注)インバータによる最低回転数での送風機逆転運転を実施する場合、ルーバー面より一時的に白煙が発生・流出します。流出した白煙は上昇し再び送風機より吸い込まれますが、外風によって横へ流れてしまう場合があります。この場合流れた白煙が道路上の視界を妨げる事があるので注意が必要です。

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