冷却塔と冷凍機の違いは?役割や仕組み、構造などを解説

ビルなどの大型施設の空調システムや工場などに使用される冷却塔(クーリングタワー)と冷凍機。

同じ「冷」という文字がありますが、役割や仕組みなどは全く別物です。
ここでは、冷却塔と冷凍機をセットとして対比しながら、それぞれの特徴を解説していきます。

冷却塔(クーリングタワー)・冷凍機とは

冷却塔(クーリングタワー)は冷凍機から戻ってきた「冷却水」を冷やすための装置です。
一方、冷凍機は冷たい熱を作り出すための装置になります。冷たい熱というのは「冷水」のことです。

ビルなどの大型施設の空調はこの冷凍機が作る「冷水」を使って、空調を行います。
快適な空間には冷風が吹出されていますがこの「冷水」にブロワーで風を当てることによって冷風が作られています。

冷却塔(クーリングタワー)・冷凍機の役割

冷却塔(クーリングタワー)と冷凍機、それぞれ「冷やす」という働きは同じですが、役割は異なります。
それぞれの役割を紹介していきましょう。繰り返しになりますが次のようになります。

冷却塔の役割は温度が上がった「冷却水」を冷やす役割があるのに対し、冷凍機の役割は「冷水」を作る役割があります。

どちらも空調システムでは重要な装置です。

冷却塔(クーリングタワー)・冷凍機の仕組み

冷却塔(クーリングタワー)・冷凍機はどのような仕組みなのか、それぞれの特徴を紹介します。

冷却塔の仕組みは、高温のアスファルトに水を撒いたときに涼しいと感じるのと同じ原理です。
当然、水の温度の方が低いので、冷やされるから涼しくなるというのも一理あります。冷却塔では約20%がこの顕熱変化によると言われています。
しかし、ほとんどは蒸発する際に発生する気化熱によって熱を奪われて冷やされることが要因です。いわゆる潜熱変化で約80%だと言われています。

より効率的に冷やすために、冷却水と外気をいかに効率よく接触させるかがポイントとなります。
ここで送風機と充てん材の出番です。

送風機によって外気を誘引し、充てん材にて冷却水と接触させます。

一方、冷凍機の仕組みも打ち水の原理と同じです。
ただし、それは「冷凍サイクル」という大きな仕組みの中の一部で使われています。
「冷凍サイクル」の中で「蒸発工程」という工程があります。

冷凍機もこの工程で蒸発潜熱を利用して冷たい熱を作り出すのですが、より蒸発の力を強力にするために冷媒を利用するのです。

冷媒には自然冷媒とフロン類が使用されます。
「冷凍サイクル」という言葉が出て来ましたが、蒸発工程の他に「圧縮」「凝縮」そして「膨張」と言う工程があります。
これが堅牢な容器に密閉されており、冷媒が循環しています。
この冷媒を繰り返し使うためには蒸発した気体の状態から液体の状態に戻す必要があり、「凝縮」と言う工程で実は冷却塔が冷やした「冷却水」が活躍しています。
その結果、冷却水は温められますのでこれを冷却塔で冷やす訳です。
冷媒として使用されるものは『二酸化炭素』『水』『アンモニア』で、フロン類は、『特定フロン』『指定フロン』『代替フロン』です。

冷却塔が大気圧の下、外気湿球温度に影響されながら仕事をしているのに対し、冷凍機は密閉された容器の中で、高圧にしたり、真空に近い圧力にしたりとエネルギーを使いながら仕事をしています。
ここに大きな違いがあります。

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冷却塔(クーリングタワー)・冷凍機の方式

冷却塔・冷凍機共に様々な方式の装置があります。
役割が一緒でも、設置する環境によって適した装置は異なるので、さまざまなタイプのものが用意されているのです。

冷却塔(クーリングタワー)の方式一覧

冷却塔は「水冷式」と「空冷式」に大きく分けられ、「水冷式」は『開放式冷却塔』と『密閉式冷却塔』の二方式からなります。
それぞれの特徴を紹介していきます。

開放式冷却塔

開放式冷却塔は外の空気と冷却水が直接触れることにより、水の温度を下げるのが特徴。
直接触れるので密閉式に比べると、効率がいいです。

効率よくできる点は優れていますが、悪い点もあります。
外の空気と触れるため、ゴミや細菌などにより汚れてしまいます。
そのままにしておくと、冷凍機やポンプなども汚れるので、定期的な掃除が必要になります。

密閉式冷却塔

密閉式冷却塔は塔内に銅管が通っており、その管の中を冷却水が流れています。
外側には充てん材が設置され開放式と同じ原理で散布水が冷やされます。
銅管の中の冷却水の熱が銅管を通して散布水に移動し、冷却水が冷やされます。

直接外の空気と触れることなく冷却水を循環できるので、メンテナンス費用を抑えることができます。

冷凍機の方式一覧

冷媒を蒸発させて水の温度を下げますが、蒸発させるには冷凍サイクルを回すことが必要です。
ここでは主に空調用として使用される冷凍機の特徴を紹介します。

蒸気圧縮式冷凍機

冷凍機の中で圧倒的に使われているのが蒸気圧縮式冷凍機です。

特長としては気体の冷媒を圧縮機で圧縮する点です。
圧縮機は機械エネルギーで駆動され、その形式は容積式と遠心式に分かれます。
遠心式はターボ冷凍機と呼ばれ、最も多く使われているようです。

次に圧縮されて高圧になった冷媒を凝縮器にて冷却水に放熱(冷却)し、圧力の高い液体を作ります。
そして、膨張弁で圧力を下げて蒸発器で低い温度で蒸発するのです。

メリットはイニシャルコストが安く、コンパクト化しやすい点、さらに成績係数(COP)が高く、点検の周期を長くできる点です。
デメリットは騒音と、高圧ガスを使うため、資格保有者を有する場合があります。

吸収式冷凍機

吸収式冷凍機は、蒸発圧縮式の冷凍機とは違い、蒸発して仕事をした「冷媒」を再度液体に戻すために圧縮機に代わり、吸収性の高い液体で冷媒を吸収させます。
冷媒は「水」、吸収剤は「臭化リチウム」が使われます。

メリットは消費電力が少なく、フロン類を使用しない点、そして運転するのに資格が不要であることです。
加えて、冷水も温水も供給できるのもメリットです。
デメリットは冷却塔(クーリングタワー)が大きくなること、そして起動に時間がかかり、定期点検が複雑なことです。

冷却塔(クーリングタワー)・冷凍機の構造

冷却塔については断面図を示すことで詳しい説明は省きます。
送風機と充てん材は先ほど、出てきましたが再度簡単に説明します。

送風機は外気を誘引し、充てん材の中で冷却水と接触させ、熱交換した外気を外部へ吐出します。
充てん材は熱交換器とも呼ばれ、開放式の場合は薄いシートを貼り合わせたものになっています。
PVC製のシートを真空形成し、接触面積が大きくなるように工夫されています。
密閉式の場合、銅管がコイル状に組み込まれており、その中を冷却水が循環しています。
その他、色々な部品がありますが上部水槽について説明します。
開放式の場合は、冷却水が冷凍機より戻ってくるところで充てん材に落下させる役目です。密閉式の場合は、散布水をコイルに含む熱交換部に落下させます。

蒸気圧縮式冷凍機の構造

一方、冷凍機の構造も複数のパーツにて成り立っています。
蒸気圧縮式では、圧縮機・凝縮器・膨張弁・蒸発器が代表的なパーツです。

圧縮機

圧縮機は、凝縮しやすいように気体の冷媒に圧力をかける部分です。
低温・低圧の気体の冷媒を高温・高圧の気体の冷媒に変化させています。

凝縮器

凝縮器は、圧縮機で圧縮された気体の冷媒を閉じ込めておく部分です。
冷却水に冷媒の熱を逃がしますので冷却水は温められ冷却塔の入口水温となり冷却塔へ送られます。

膨張弁(圧縮機構)

膨張弁は、凝縮器から送られてきた液体の冷媒を減圧する部分です。
減圧すると膨張し、液体の冷媒は温度が低くなります。

蒸発器

蒸発器は、冷たい熱を取り出す部分です。
冷水の熱を冷媒に移し、冷水は空調機へ、冷媒は低温・低圧となり再び圧縮機へと循環します。

吸収式冷凍機の構造

吸収式では、蒸発器・吸収器・再生器・凝縮器が代表的なパーツです。

蒸発器

蒸発器は、低温で冷媒(水)を蒸発させる部分です。
真空に近い状態になっている蒸発器内部は4~5℃で冷媒が蒸発します。
冷水は空調機へ、蒸発した冷媒(水)は水蒸気となって吸収器へ移動します。

吸収器

吸収器は、吸収液にて水蒸気となった冷媒(水)を吸収する部分です。

再生器

再生器は、吸収器で作られた吸収液を加熱・分離させる部分です。
加熱することにより吸収液と水蒸気に分離し、水蒸気は凝縮器へ、吸収液は濃溶液へとなります。

凝縮器

凝縮器は、冷媒(水)の水蒸気が冷却水と熱交換にて液体化させる部分です。
液体化により、再び液体となった冷媒の水は蒸発器へ、冷却水は冷却塔(クーリングタワー)にて冷やされたあと再度吸収器に戻ります。

まとめ

冷却塔(クーリングタワー)と冷凍機はお互いにとって必要不可欠な存在ですが空調システムの中では冷凍機を「主機」、そして冷却塔を「補機」と言ったりもします。
密接な関係ですが、それぞれの環境下に適した冷却塔や冷凍機を使用するようにし、周りの騒音や危険を回避することも大切です。
どのような冷却塔や冷凍機を設置すればいいのか迷う場合は、ぜひメーカーにお問い合わせください。

冷却塔の導入なら空研工業