なぜ冷却塔の冷却水が減るのか?原因と防止策を理解し、適切に対処しよう

使用している冷却塔(クーリングタワー)の冷却水が減ってしまった原因がわからず、お困りではないでしょうか。

定期的に行っている点検で冷却水の水位が異常に下がっていることに気づき、驚くということも珍しくありません。
冷却塔の冷却水は、その一部を蒸発させることにより残りの冷却水を冷やしていますので自然に減っていきます。

しかし、異常に減る場合は何か問題が起きている可能性が高く、早急の対応が必要となることもあります。

そこで本記事では、冷却水が減る原因と防止策についてわかりやすく解説します。

冷却水とは

冷却塔(クーリングタワー)とは簡単に言うと、冷凍機で温められた冷却水を冷やす装置のことです。
冷却水は冷凍機と冷却塔の間を循環している水で循環水とも呼ばれます。

空調機や冷房設備を適切に稼働させるには、冷凍機の存在は欠かせませんが、使用し続けていると冷却水の温度が上昇していきます。

冷却水の温度が上昇したままですと、冷凍機の仕事である冷水を作ることができなくなるため、冷却水を冷やす必要があります。
その役割を担っているのが冷却塔です。

冷水とは、冷凍機が冷暖房設備を適切に稼働させるために使われる水のことです。使われた冷水は12℃まで上昇し、冷凍機では7℃まで冷やされることが多いようです。

冷却塔で水温を下げられた冷却水は再び冷凍機に送られていき、冷凍機は連続して冷水を作り出すことができます。

このように、冷却水は、冷暖房設備を適切に動かすための重要な役割を担っているのです。

冷却塔には、「開放式冷却塔」と「密閉式冷却塔」の2種類あります。

開放式冷却塔は、取り込んだ空気と冷却水を直接触れさせることで、冷却水の温度を下げます。
外気が冷却水に接触すると、その一部は蒸発し残りの冷却水の温度は下がります。

冷却塔には、水と空気の流れが「直交流」となる「クロスフロータイプ」と「向流」となる「カウンターフロータイプ」があります。

密閉式冷却塔は、外気と冷却水を間接的に接触させ冷却します。
冷却水が通る銅管に散布水と外気を当てて、冷却水温度を下げる仕組みになっています。
開放式と比べて配管が汚れにくく、メンテナンスの頻度を抑えることができるという利点があります。

冷却塔の仕組みは複数あることを知ることで、冷却水が減る原因も把握しやすくなります。

次の章では、冷却水の水位が低下する主な原因について説明します。

冷却水が異常に減る3つの原因

冷却塔(クーリングタワー)は、冷却水の温度を下げる装置です。

水を蒸発させると気化熱が発生しますが、この気化熱を利用することで冷却水を冷やして再循環させることが可能になります。

水を蒸発させるということは、その分水が減るということです。
蒸発する水の量は冷却塔の大きさや温度条件によっても異なりますが、循環水量の約1%の水を蒸発させていると言われています。

そのため、定期的に水を補給する必要があるのです。
このように、冷却塔が普通に稼働した結果として冷却水が減る分には問題ありません。

しかし、時には冷却塔内の設備に不具合が生じるなどして、水位が下がってしまうこともあります。

その主な原因は「上部水槽散水孔が目詰まりを起こしている」「ボールタップが給水不良を起こしている」「循環ポンプの不良によって引き起こされる」の3つです。

原因1.上部水槽散水孔が目詰まりを起こしている

冷却塔の上部に設置されている上部水槽には、散水用の穴(上部水槽散水孔)が開いています。

この穴から水を下の充てん材に落とし、外気と接触させ蒸発させることにより、冷却水の水温を下げています。
藻の繁殖などによってこの上部水槽散水孔の穴が詰まり始めると水が下に落ちず、散水が上手くいかなくなります。

そうすると、水の温度が下がらなくなります。

さらに、目詰まりが原因で上部水槽の水位が高くなり冷却塔外に溢れ出てしまいます。
その結果、冷却水はどんどん減ってしまいます。

冷却塔の上部水槽はカバーが無ければ外気にさらされやすく、日当たりが良いなど設置場所によっては藻の繁殖に最適な環境になります。
藻以外でも、スケールやゴミなどによっても上部水槽散水孔は目詰まりを起こします。

冷凍機にとって重要な冷却水が減ったり、水温が下がらなかったりする状態が続くと空調や冷暖房設備を適切に稼働できなくなります。

原因2.ボールタップが給水不良を起こしている

ほとんどの冷却塔には冷却水の水位を保つために、ボールタップが設置されています。

ボールタップはシャフトと呼ばれる支持棒の先端にボール状の浮き玉をつけた構造をしていて、水面に浮かせて水位の状態をキャッチします。

水位が下がると、つけ根にある弁が自動的に開いて給水し、止水水位になると自動的に給水が止まります。
この仕組みから、冷却水が効率良く循環するのは、ボールタップによって下部水槽の水位が適切に保たれているためと言って良いでしょう。

冷却水が減ってしまうのは、ボールタップが正常に動かず水位が下がっても弁が開かれないことが考えられます。
また、給水圧が低かったり、ボールタップのサイズが小さすぎるということも考えられます。

原因3.循環ポンプの不良によって引き起こされる

冷却塔に設置されている循環ポンプは、冷却水をはじめブラインなどの流体を循環させる働きがあります。

冷凍機で使用され温度が上昇した冷却水は、冷却塔で気化熱によって冷やされます。
そして、再び冷凍機へと送られますが、その水を循環させているのが循環ポンプです。
循環ポンプが不具合を起こすと、当然冷却水の循環が正常に行われなくなります。

そうすると、冷凍機へ送る冷却水が減るなどの不具合が起きてしまいます。
循環ポンプが不具合を起こしてしまうのは、異物が入ったりゴミが蓄積したりすることが原因と考えられます。

たとえば、環境ポンプの羽根車は異物を巻き込みやすく、噛み込んでしまうと摩耗を引き起こして吐出量が下がります。

特に開放式冷却塔は外部から異物が侵入しやすく、汚れが蓄積されてポンプを詰まらせることも珍しくありません。
異物だけでなく、循環ポンプがエアーを噛み込んでしまうことも冷却水の循環に支障をきたす原因となります。

発生しうる被害

冷却水が減ることで、冷凍機が正常に稼働しなくなるばかりでなく、冷却塔(クーリングタワー)にも不具合が生じます。
そのまま放っておくと、深刻な被害をもたらす恐れが出てくるのです。

冷却水が必要以上に減るということは、冷却水の濃縮度合いが進むということになり、腐食を加速させることにつながります。

腐食が進行すると配管などから剥がれ落ちた鉄分やサビが冷却水に混入したり、配管がボロボロになったりするなどさまざまな不具合を生じさせます。

長年の使用で設備が老朽化していくことは自然なことですが、冷却水が減ることによって冷却塔の老朽化を加速させてしまうことがあります。

冷却水が減る現象を防ぐ3つの防止策

深刻な被害が出ないように、冷却塔(クーリングタワー)を管理するにはどうしたらよいのでしょうか。
主な防止策について3つご紹介します。

対策1.定期的に掃除をする

冷却塔はゴミなどの異物が混入しやすく、それがトラブルの原因になっています。
定期的に掃除をして、目詰まりを防ぐことが冷却水の量を適切に保つことにつながります。

上部水槽の掃除は危険を伴いますので、カバーを設置し藻の繁殖を防ぐなどの対策をするようにしましょう。

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対策2.ボールタップのメンテナンスを怠らない

ポールタップの状態を定期的にチェックすることで、不具合が生じた場合でも速やかに対応できるようになります。
ポールタップに不具合が生じる原因としては、浮き玉が正常に動かないためにつけ根の弁が開かない、元栓が閉まっている、ポールタップに内蔵されているストレーナーが目詰まりを起こしている、など複数考えられます。

ポールタップが正常に動かない原因を見つけ、適切に対処することがポイントです。
内部のストレーナーは、補給水に含まれる物質などによって目詰まりを起こします。

ボールタップの上部にあるネジを回して中にあるストレーナーを取り出し、詰まっている汚れを取り除くことでポールタップは正常に動くようになるでしょう。

対策3.定期的に循環ポンプの点検を実施する

冷却水を循環させるという、重要な働きをしている循環ポンプの点検は、定期的に実施しましょう。
点検は半年に一度が目安です。

そして、必要に応じて循環水ポンプの清掃を行い、スケールが溜まっている場合はスケール除去剤などを用いて洗浄します。

まとめ

冷却塔(クーリングタワー)の冷却水が異常に減る原因と防止策について説明しました。

冷却水が減ることによって深刻な被害が発生する恐れがありますので、冷却水の水位は適切に管理することが求められます。

定期的に各設備のメンテナンスを実施するとともに今回説明しました防止策も実施して、冷却塔を安全に稼働させていきましょう。

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