冷却塔(クーリングタワー)は空調設備や工業設備(産業設備)で利用されている装置ですが、管理する上で欠かせないのが冷却水の管理です。
今回はこの冷却水で問題が起こってしまう原因や対策法について解説していきます。
冷却水の管理(給水)の重要性が分かる内容になっているので、ぜひ参考にしてみてください。
冷却塔(クーリングタワー)とは
冷却塔(クーリングタワー)は室内を快適にするための空調設備に欠かせない装置。空調だけでなく工業設備(産業設備)でも利用されており、間接的ではありますが私たちの暮らしとも深く関係しているといえるでしょう。
冷却塔は別の名を『クーリングタワー』といい、デパートなどの商業施設やオフィスビルの屋上などに設定されていることが多いです。
上部にはファンがついており、内部では冷却水が循環しています。
基本は冷却塔(クーリングタワー)単体で使用するのではなく、冷凍機や放熱を必要とする熱源機器と合わせて使うのが一般的です。
たとえば冷房を使用する際、空調機器から出る冷風は、空調機内で冷却水と熱交換されることによって得られます。
室内の熱がどこへ行くのかというと、冷凍機の蒸発器内で冷媒の蒸発によって吸熱され、さらにこの熱が凝縮器を通って冷却水へ放熱されるのです。
この放熱された冷却水は、外気に捨てられます。
この冷却塔(クーリングタワー)に欠かせない『冷却水』は、効率よく循環させるためにもきちんと給水しておく必要があるのですが、きちんと管理が行われていないとあらゆる問題が発生します。
冷却水で問題が起こる2つの原因
冷却塔(クーリングタワー)で循環させている冷却水。この冷却水は様々なトラブルが発生させる可能性があります。
給水管理が行き届いていないという大きな原因のほか、さらにどのようなことが原因があるのでしょうか?
詳しく見ていきましょう。
原因1.冷却塔(クーリングタワー)の濃縮
冷却塔(クーリングタワー)で使われる冷却水は循環させるもの。
しかし、この循環を行ううちに水は濃縮していきます。
この濃縮こそが、冷却水で起こる様々なトラブルの原因となるのです。
どんなに綺麗で透き通って見える水でも、カルシウムやシリカ、マグネシウムなどの目に見えないミネラル成分(不純物)が混ざっています。
この水が蒸発することにより、不純物の濃度が濃くなってしまうのです。
水は蒸発を繰り返し行っていますが、水に入り込んでいるミネラル成分はそのまま残って蓄積されていきます。
原因2.冷却塔(クーリングタワー)のオーバーフロー
水が冷却塔(クーリングタワー)の下部水槽や、冷却水ピットより既定の水位を超えてしまい、溢れ出た水が排水管から排水されることを、『オーバーフロー』といいます。
もしも常時オーバーフローしている場合、どこからか冷却塔(クーリングタワー)へ給水され続けていることになり、設備の方で不具合が生じている可能性があります。
発生しうる2点の被害
主に冷却水トラブルで多い原因が以上の2つですが、それにより様々な被害が起こってしまいます。
被害1.腐食
冷却水の濃縮が起こると、まず水質が悪化してしまうでしょう。
ミネラル成分などの不純物は飽和状態になると、それが固まることによりスケール現象(不純物等が固まって設備の壁・管などに付着すること)が起こるのです。
さらに、冷却水の中に含まれる塩分も濃縮することで濃度が高くなると、腐食を起こします。
この腐食により、配管に穴が空いてしまうこともあります。
被害2.藻・細菌・レジオネラ属菌の増殖
冷却水の濃縮による水質の悪化でもう一つ起こるのが衛生面のトラブル。主に、藻・細菌・レジオネラ属菌の増殖です。
これらが増殖することにより、レジオネラ症などの健康被害が起こる可能性が高くなるでしょう。
外気からのホコリなども合わさると、それがスライム化してしまい、悪臭を引き起こすこともあります。
冷却塔(クーリングタワー)の濃縮・オーバーフローを防ぐ3つの対策
冷却塔(クーリングタワー)の冷却水は、きちんと給水管理等を行わないと、水質が悪化して様々なトラブルを引き起こします。
では、具体的にどんな対策法があるのか、見ていきましょう。
対策1.配管・水量を定期的に確認
冷却塔(クーリングタワー)の濃縮による配管の劣化や、オーバーフローを防ぐためには、日々の点検が大切です。
配管から水が出ていないかを目視で確認し、給水配管に流量計をつけて水量を確認するなど。
これらの確認等をきちんと日々行うだけでも、濃縮やオーバーフローを防ぐことにつながります。
対策2.連続ブローダウン
冷却塔(クーリングタワー)にある手動補給水バルブを常に開けておくことで、連続して水を給水する方法です。
やることは給水バルブを開けるのみなので、比較的簡単に冷却水の濃縮を防ぐことができるでしょう。
ただし配管工事代はかかりませんが、垂れ流しにする分、水代がかかるのが難点です。
そのため、井戸など水を無限に使える環境や、工業用水が比較的安い事業所に向いているといえるでしょう。
対策3.自動ブローダウン
自動ブロー装置を設置して、自動でブローダウンを行う方法です。
『水中に不純物が増えると電気が通りやすくなる』という性質を利用しています。
電気伝導率(汚れの度合い)センサーが冷却水を測定して、数値が上がると自動で給水を行う仕組みです。
水が汚れたときのみ自動給水してくれるので、オーバーフローを予防し、節水効果が期待できるでしょう。
まとめ
冷却水の水量・水質管理は、冷却塔(クーリングタワー)を安全に利用するために欠かせません。
給水をきちんと行うことで、濃縮やオーバーフローを予防することができます。
電気伝導率センサーによる水質管理や自動給水という便利なものもありますので、ぜひ導入してみてはいかがでしょうか?