ラジエーターは装置の内部で発生した熱を吸収して熱せられた冷却液を外気で冷やす装置です。
しかし、冷却液が循環する配管内に空気(エア)が入り込むと、冷却機能や低下したり、ポンプや他の設備にトラブルが生じ、不具合の原因になります。
そのため、配管の接続やメンテナンス、交換などの際にはラジエーターのエア抜きが必要になるのです。
本記事では、ラジエーターのエア抜きが必要な理由や注意点、エア抜きの方法について詳しく解説していきます。
ラジエーターについてはこちらの記事をご参照ください。
ラジエーターのエア抜きとは?
ラジエーターはフィン付きのチューブ(ファンコイル)と軸流ファン、支持構造などから構成されており、冷却方式を大きく分けると「押込通風型」と「吸込通風型」の2種類に分けられます。
簡単に説明すると、フィンコイル(チューブ)の管束に対してファンを押込側に置く方式が押込通風型のラジエーターで、吸込側に置く方式が吸込通風型ラジエーターです。
どちらの方式であっても、配管接続や運転前には配管内の空気を抜く「エア抜き作業」が必要です。
エアは配管内の高いところに上がってきます。
そのため、適切なエア抜き作業を行わなければ、冷却液の中にエアが混入してしまい、冷却液の循環に支障をきたすなどさまざまなトラブルの原因となってしまいます。
なぜエア抜きが必要なのか?
ラジエーターのエア抜きが適切に行われないと、エアいわゆる空気が入り込むことで、さまざまな支障や不具合の原因になるので、注意しなくてはなりません。
では、なぜエア抜きが必要なのでしょうか?
エア抜きが必要な理由は以下2点が考えられます。
それぞれ、詳しく説明していきます。
原因1.配管のエア噛み
エア噛みはポンプの稼働中に空気が混入した場合や流体に溶けていた空気が分離することで気泡やエア溜まりが発生してしまい、本来期待される吐出圧や流量が得られなくなるトラブルです。
エアが入り込むとポンプが空転を起こしてしまい、吐出圧が急激に低下するので注意しなくてはなりません。
最悪、ポンプが破損する可能性があります。
原因2.エア溜まり
エア溜まりが起こると、ポンプのエア噛みの原因になります。
もっとも、エア溜まりが起こる原因は複数考えられるため、エア噛みが生じた場合には考えられる原因を一つひとつ入念にチェックして、修理やメンテナンスを行わなくてはなりません。
非常に手間と時間、コストがかかる作業になりますので、最初からエアが入り込まないように配管方法を工夫することが必要となるのです。
エア抜き不足で発生する3つの被害について
では、ラジエーターのエア抜きが不十分である場合や配管系にエアが入ってしまった場合、どのようなトラブルが起こるのでしょうか。
起こりうる被害について見ていきましょう。
被害1.ポンプの能力不足
エアが入り込むことで、ポンプの圧力に変動が起こり必要な流量を保持できなくなります。
特に流量不足や冷却水の循環停止は、大きな機器トラブルの引き金になり、最悪ポンプが破損するケースもありえます。
被害2.腐食・摩耗の加速
エア抜きをしないと、配管はエロージョンやコロージョンが起こりやすくなり、磨耗的腐食による被害が起こりやすくなります。
これは、エアが入り込むことでバブルが配管内面を物理的にアタックしてしまうことが原因です。
被害3.他の機器の運転への支障や故障
冷却液にエアが入り込むと、冷却機能が低下してしまい、主機が本来の役割を果たせなくなります。
発電設備や工場プラントなどのほかの設備の機能に支障をきたす場合や故障する原因にもなるので、エアの入り込みには注意しましょう。
ラジエーターのエア抜き対策
では、ラジエーターのエア抜きを適切に行うためにはどのような対策が必要なのでしょうか。
ここでは具体的な対策について解説していきます。
対策1.電磁弁と膨張タンクを活用した自動エア抜き
配管系のエア抜きは、膨張タンク+電磁弁で行われるのが一般的です。
自動制御によってエアを継続的に排出することで、運転中のエア噛みや空気溜まりを防止できます。
対策2.膨張タンクは「最も高い位置」に設置する
ラジエーターを使った冷却システムでは、冷水がポンプによって各機器へ循環し、熱を奪ったのち再びポンプに戻る「循環型配管」が採用されています。
この循環経路には、温度変化によって、水の体積変化に対応するための「膨張タンク」が設置されています。
開放式の膨張タンクの場合は、必ず配管系統の中でもっとも高い位置に設ける必要があります。
高い位置に配置することで、配管内に溜まった空気が自然と上昇して膨張タンクに集まり、エアの自動排出がスムーズに行えるのです。
逆に、膨張タンクの位置が不適切だと空気が抜けず、冷却性能の低下やポンプトラブルの原因となるため、設置位置には気を付けましょう。
膨張タンクは開放式の場合、配管系統の最も高い位置に設置をしましょう。
高い位置に設置することで、自然なエアの上昇・排出が促され、エアの滞留を抑えることができます。
まとめ|エア抜きは、重要な作業
ラジエーターの冷却性能を安定するためには、配管接続や保守のタイミングでエア抜きを確実に行うことが大切です。
ラジエーターのエア抜きが適切に行われていないと、エアが混入して吐出圧や流量が下がるエア噛みを引き起こします。
エア噛みやその原因となるエア溜まりはポンプの破損につながるなど、大きな被害をもたらします。
設備トラブルを未然に防ぎ、長期にわたって安定運用を実現するためにも、正しいエア抜きの知識と対応を日頃から心がけましょう。