循環水量と補給水について知ろう

冷却塔(クーリングタワー)を使用しているのに主機の効率が上がらない、あるいは水量が減ってきたなどのトラブルを回避し、
トラブルによる設備の故障や修理のコストがかからないようにするためにも、適切な補給水量を知るための計算方法を知ることが大切です。

そのための1つのカギとなるのが冷却塔の循環水量です。
循環水量について、理解を深めていきながら補給水についても理解していきましょう。

冷却塔(クーリングタワー)の循環水量とは

循環水とはその名の通り冷却塔(クーリングタワー)と主機との間を循環している水のことであり、その水の量を循環水量といいます。
冷却塔と主機の間を循環していることから循環水と呼ばれますが、冷却塔本体や主機本体の内部では冷却水と呼ばれることが多いです。

必要な循環水量は冷却塔の能力により変動するのではなく、主機に必要な循環水量により変動します。
つまり、主機の負荷の状況によって循環水量が変わりますのでそれに見合う冷却塔が必要になってきます。
今回は主機の代表例である「冷凍機」の2つの種類を紹介し、その具体的な循環水量を示します。冷凍機にはターボ式冷凍機と吸収式冷凍機などがあります。

また、循環水量は、量(ボリューム)で表す際は、L:循環水量(㎥/h)、重量で表す際は、L:循環水量(kg/h)となります。
例えばターボ式冷凍機で100RTの場合は量(ボリューム)で表すと、L=78㎥/h となり、重量で表すと、L=78,000kg/h となります。(水の場合 1㎥=1,000kg)

冷却塔(クーリングタワー)の循環水量を知る目的

冷却塔(クーリングタワー)を長時間使用すると、水の蒸発によって濃縮され、冷却水の濃度が高まっていきます。

トラブルを避けるためにも濃縮や水質の管理が欠かせません。
使用目的や環境に応じて最適な能力を有する冷却塔を選ぶことが第一ですが、その循環水量を把握し適切な補給水を与えることで、適切な機能を維持し機器のダメージを抑えることができます。
その結果、省エネにつながったり、メンテナンスコストを抑えたりすることができます。

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循環水量に応じた補給水を求める計算式

蒸発量は次の計算式で求められます。

蒸発量=(循環水の入口と出口の温度差×循環水量×水の定圧比熱)÷(水の蒸発潜熱)です。
単位で表すと、WE={(Tw1-Tw2)× L ×Cp} ÷2,520 です。

■記号と単位
WE:蒸発量
Tw1:入口水温(℃):温められて冷却塔へ戻ってくる冷却水の温度=冷凍機の出口水温、ターボ冷凍機の場合は37℃、吸収式冷凍機の場合は37.5℃となることが一般的です。
Tw2:出口水温(℃):冷やされて冷却塔から出ていく冷却水の温度=冷凍機の入口水温、ターボ冷凍機も吸収式冷凍機も32℃となることが一般的です。
L:循環水量(kg/h) :前述のように冷却塔と冷凍機の間を循環する冷却水の水量です。
Cp:水の定圧比熱(4.2kJ/kg℃):水1kgを1℃変化させるのに必要な熱量のことです。
2,520:水の蒸発潜熱(kJ/kg):水1kgが蒸発するときに奪う熱量のことです。

これに加えてキャリーオーバー分とブローダウン分を足したものが必要な補給水の量です。
キャリーオーバー量(WD)は製品の構造によって左右されますが、量としては極めて微量で、一般的には循環水量の0.05%程度となります。
ブローダウン量(WB)は空気中の汚染物質の量や補給水の水質、そして補給水の割合によって変わりますが、空調用の場合は一般に循環水量の0.3%程度が必要と言われています。

例) ターボ式冷凍機で100RTの場合
WE=(37-32)×78,000kg/h ×4.2 ÷2,520 ≒650kg/h
WD=78,000kg/h×0.05÷100 =39kg/h
WB=78,000kg/h×0.34÷100 =234kg/h
必要な補給水量(⊿L)はこの3つを合わせたものになりますので下記のように求められます。
⊿L =WE + WD + WB =650 + 39 + 234 = 923kg/h

■語句の説明
WE:蒸発量:熱交換のために使われた循環水から蒸発した水の量
WD:キャリーオーバー量:熱交換されずに吐出空気に混入して冷却塔外に排出される損失水量(ルーバーからの飛散も含めていうことが多い)
WB:ブローダウン量:循環水の水質管理をするために排出される循環水の量

まとめ

冷却塔(クーリングタワー)はその原理から、冷却水の一部が蒸発することにより冷却水を冷やしますので、補給水を補給しないと次第に濃縮されていきます。

循環水の濃縮は機器にさまざまなダメージを与える原因にもなるため、循環水量と補給水との関係より適切な補給水の量を求めて補っていくことが大切です。

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