冷却塔の蒸発量と冷却水供給の仕組みを解説

冷却塔(クーリングタワー)は、水が蒸発して熱を奪う気化熱の原理を応用した、冷却水を冷やす装置です。
冷却塔は効率的に冷却し、円滑に冷却水を供給し続けられるように工夫され、冷却水の循環利用ができるようになっています。

つまり、蒸発した分=蒸発量を補給水で補う仕組みです。

冷却塔の基本的な仕組みを理解する上で、冷却塔の蒸発量を計算方法を知ることが役立ちます。

冷却塔(クーリングタワー)の特徴と蒸発量の関係とは

冷却塔(クーリングタワー)は、温められた冷却水の一部が蒸発する際に残りの冷却水の熱を奪って冷えていくという、気化熱の原理を応用した装置です。
冷却塔がクローズアップされる以前の冷却水や工業用水は、地下水が多く使用されていました。
いわゆる「使い捨て」の状態です。

この結果、地盤沈下をはじめとする様々な悪影響が想定され、これを防ぐために地下水の汲み上げを規制する法的措置がとられました。
冷却塔の特徴は冷却水の循環利用ができる点です。一度使った水を冷却して再び冷却水として使うことができます。

しかし、全ての水を再利用できるわけではありません。一部の水が蒸発しないと残りの水は冷えません。
つまり、この蒸発した分=蒸発量が循環する冷却水から減っていくわけです。
この蒸発量は補給をしないと冷却水は次第に減っていき、その結果、継続して循環させることができなくなってしまいます。

冷却塔(クーリングタワー)の蒸発量とそれ以外に発生する水の損失を補う仕組み

冷却塔(クーリングタワー)で発生する水の損失は、熱を奪うための蒸発による蒸発量と、微小な水滴として飛び去っていくキャリーオーバ量、そして冷却水の濃縮を防止するためのブローダウンの3つがあります。

キャリーオーバ量は冷却塔の構造や、空気と水の接触方式の違い、あるいは外気の通過風速などにより変化はありますが、循環水量の0.05%程度です。
冷却塔は冷却水の一部を蒸発させ、残りの冷却水を冷やしますので冷却水は減っていきますが、冷却水に溶け込んでいるミネラルや外気から取り込まれた埃やゴミなどは残り、濃縮が進みます。
濃縮された水は、接触する金属部分を腐食させるほか、スケールやスライム、藻が発生する原因となる点で問題です。

冷却塔の内部の腐食や劣化を防ぐためにも、濃縮された水の一部を捨てて新しい水を補給し、水の濃度を良好に保たねばなりません。
濃縮された水の一部を捨てることをブローダウンと呼び、ブローダウンで捨てた分の水=ブローダウン量を含めた3つの水の損失量は、補給水量と呼ばれボールタップから自動給水される仕組みが備わっています。

冷却塔の設計条件で計算される蒸発量と、実際の運用環境では水量・入口温度・外気湿球温度が異なるため、実際の蒸発量も異なってきます。
また、ブローダウン量も補給水の質や濃縮倍数の設定の仕方で変わってきますが、一般的に循環水量の0.3~0.4%程度が必要と言われています。

冷却塔の損失水量の算出なら空研工業

冷却塔(クーリングタワー)の蒸発量の計算式

蒸発量(E)は、次の式で計算できます。

蒸発量(E)= ⊿t×L×Cp÷2,520 = ⊿t×L/600=L×( ⊿t/600)
⊿t:循環水入口・出口の温度差(℃):代表的な例として、ターボ冷凍機が主機の場合、 ⊿t=5℃となります。
Cp:水の定圧比熱=4.2(kJ/kg℃):1kgの水を1℃上げるのに必要な熱量のことです。
2,520(kJ/kg):水の気化熱(蒸発潜熱):1kgの水が蒸発するときに奪う熱量のことです。
L:循環水量(L/min)

少し時間はかかりましたが「蒸発量」の計算式までたどり着きました。
実はこの式から、一部の水が蒸発することにより、残りの水を冷やすことがどの程度なのかわかります。もう少しお付き合いください。

蒸発量の計算式を見ていきましょう。
最初の式はCp(水の定圧比熱=4.2(kJ/kg)が使われていますが、次の式では2,520÷4.2=600と計算済みの数値が記入されています。
更に最後尾の式はL(循環水量)を前に持ってきています。
そうすると、この( )でくくられた式を計算してみると、L(循環水量)に対する比率が分かります。パーセントにするには100をかければ良いですね!

ここでは、代表的な例として示した「ターボ冷凍機」の⊿ t を使い計算してみます。
蒸発量(E) = L x (⊿ t/600) = L x ( 5/600) = L x 0.0083 = L x 0.83%
すごいと思いませんか?1%に満たない水が蒸発することで残りの約99%の冷却水が5℃冷やされることが分かります。
1%の水が蒸発することで残りの水の温度を6℃下げることができると覚えた方が覚えやすいと思います。

以下の内容は参考のために示します。概略はすでに説明済みです。
補給水量(M)はM=蒸発量(E)+キャリーオーバ量(C)+ブローダウン量(B) から求められます。
この点、キャリーオーバ量(C)は量としては極わずかなものです。

製品の本体の構造によって左右されますが、通常は循環水量の0.05%以下となります。
ブローダウン量(B)として必要な捨てる水の量は、使用されている水の水質や濃縮の度合いによって異なります。

一般的には空調用の冷却塔(クーリングタワー)の濃縮倍数は3倍程度に設定されているため、循環水量の0.3~0.4%ほどが必要です。

まとめ

冷却塔(クーリングタワー)は、水が蒸発する際に熱を奪う気化熱の原理を利用した冷却装置です。
大事なことは、この原理を使って冷やした冷却水を円滑に循環させることです。
そのためには蒸発量を明確にし、その他の損失要素も含めて補給すべき水量を把握し、運用しなければなりません。

今回は蒸発量について少し掘り下げてみました。
ご理解頂けたら幸甚です。

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