空調設備の冷却塔(クーリングタワー)は、気化熱の原理を利用して、外から取り入れた空気を水と接触させることによって温度を下げてビルや大型建物の中の各部屋に心地よい空気を届けています。
この空気を水と接触させるために用いられるのが充填材といわれる部品なのです。
シートなどとも言われますが、家庭用のエアコンなどで空気の吸込口にある網状のネットのようなものと似ています。
エアコンのネットも一定期間経つと汚れて空気を通さなくなってしまいますが、冷却塔(クーリングタワー)の充填材も外気の汚れや循環水に含まれる汚れや藻などによって目詰まりを起こして、冷却機能が低下することがあるのです。
そのため、充填材は一定期間経過すると交換をする必要があります。
この充填材の交換が必要になる理由や交換方法などについてご説明します。
冷却塔(クーリングタワー)の充填材とは
冷却塔(クーリングタワー)では、外気と水を触れさせて、水が蒸発する際に周りの熱を奪う原理で冷却水を冷やしています。
充填材は水を散水して、そこに外気から取り入れた空気を通すことで水の温度を下げる構造になっています。
そのため、充填材は水と空気の両方が持つ汚れが付着する可能性があるのです。
しかし、散水する水には水槽に殺藻剤を入れているのになぜ汚れが貯まるのかという疑問を持つ方もいます。
冷却塔(クーリングタワー)で使用されている水は上の水槽から充填材に散水されたあと、下の水槽に回収されて再び上の水槽に戻すという循環方式がとられています。
したがって、長期間同じ水が使われることによって、清掃がきちんと行われていないと、殺藻剤を入れても水は藻や雑菌を含むようになってしまうのです。
その水が充填材に散水されますと、当然汚れや藻が付着する原因になります。
また、都市部や工場地帯などでは、大気には自動車の排気ガスや工場などが排出する有害ガスなどが混じっています。
さらに、中国大陸などから流れてくる黄砂や最近はPM2.5と呼ばれる微少有害物質も含まれているのです。
それらは外の空気と一緒に冷却塔(クーリングタワー)に取り入れられますと、当然散水されて湿った充填材に付着したり、水に溶けて循環したりすることになってしまうのです。
充填材の交換は
また、充填材は、水槽などに比べると密集した網状になっているため、簡単に清掃をすることもできません。
家庭用のエアコンのネットなどは簡単に取り外して洗うこともできますが、充填材の場合には、たくさんのネット状の部品が組み立てられているため、取り外して洗うというのは簡単にできません。
そのため、専門の業者に依頼して清掃を頼まざるを得ないのです。
しかし、長期間清掃されていない場合に充填材に汚れが固まってしまい、専門業者でもきれいにできないことがよくあります。
いわゆる目詰まり状態で、外の空気を取り入れられなくなるため、冷却機能が発揮できなくなってしまうのです。
したがって、充填材は定期的に交換する必要があります。
充填材の材質
通常、冷却塔(クーリングタワー)の充填材は薄いプラスチックが素材になっており、通常の耐用年数は7年程度と言われています。
プラスチック製ですから、当然金属よりも雑菌などが付着しやすくなっているのです。
よく、流しなどの排水口に水切りなどもプラスチックの樹脂製が多いですが、汚れてくるとぬるぬるとした状態になるのはご存じだと思います。
充填材も耐用年数は7年程度ありますが、清掃などが定期的に行われていない場合には汚れが付着して充填材としての機能が発揮できなくなることもあるのです。
冷却塔(クーリングタワー)の充填材が汚れて交換が必要になる3つの原因
冷却塔(クーリングタワー)の充填材が汚れて交換が必要になる原因について3つにまとめてみましょう。
原因1.水槽の水質
一番の原因は、清掃などが定期的に行われないため、水質が悪くなり、雑菌や藻が充填材に付着することが考えられます。
プラスチックなどの樹脂製ですので、雑菌などは喜んで付着してしまうのです。
雑菌は空気などの汚れと一緒に充填材に付着するとともに、化学反応を起こして樹脂製の充填材に固くこびりついてしまいます。
原因2.取り入れる空気(大気)の汚れ
都市部や工場地帯では空気が汚れている傾向にあります。
かつてはよく見えていた天の川も無数の星もほとんど見えないという状況にあるのです。
最近では、中国大陸からPM2.5と呼ばれる非常に微少な物質が空気がきれいな地方の地域でも飛んできて、空調設備などに付着するという事態にもなっています。
これらは、樹脂製の充填材には付着しやすく、充填材の耐用年数を縮めてしまうケースも増えているのです。
原因3.充填材の材質と耐用年数による限界
もともと、充填材はプラスチックの樹脂製のため、比較的耐用年数は7年程度です。
しかし、汚染物質などが付着して、固まってしまうことによって、その耐用年数期間もたないという例も多くなっているのです。
充填材の汚れによって発生しうる3点の被害
以上のように充填材は汚れなどによって耐用年数期間もたない可能性が出ており、充填材が目詰まりをおこすことによってさまざまな被害が出るようになっています。
被害1.冷却機能の低下
冷却塔(クーリングタワー)の充填材が汚れによって目詰まりした場合には、冷却塔(クーリングタワー)では外の空気を十分に取り入れることができなくなるため、冷却機能が大きく低下してしまいます。
被害2.冷却コストの増加
冷却塔(クーリングタワー)の充填材の冷却機能が低下しますと、温度を過度に下げることで電気代が上がったり、業者を呼んで充填材の清掃や交換をしたりすることになるため、通常の冷却コストよりも高くなってしまいます。
被害3.冷房機能の低下による業務意欲の減退
充填材が目詰まりした場合には、空調システム全体の冷房機能が低下するため、ビル内で仕事をする方たちの業務に対する意欲が減退する可能性が出てきます。
冷却塔(クーリングタワー)の充填材の交換方法
冷却塔(クーリングタワー)の充填材が目詰まりする場合には、冷却機能が低下してしまうため、すぐに業者に相談をして、清掃では回復しない場合にはすぐに交換する必要があります。
その際の充填材の交換方法としては次のようなものがあります。
方法1.充填材の清掃で回復しないかを確認する
まずは、専門の業者を呼んで清掃で機能回復ができないかを確認する必要があります。
交換になるとかなりコストがかかってしまうため、まずは清掃で回復しないかを確認してください。
方法2.充填材の取り外し
本来はプラスチック製なので軽く、すぐに取り外しができますが、汚染物質などがこびりついて固くなっている場合には、コンクリートの塊のようになってかなり重くなっています。
そのため、重くなった充填材を外せるように、数人かけて外すように準備します。
方法3.充填材のサイズを確認しながら組み立てる
充填材は、いろいろなサイズのものを組み合わせて設置するようになっています。
そのため、交換前に組み立ての手順を確認してください。
手順を間違えると、充填材は組み立てが困難になり、交換できなくなります。
基本的には、専門業者と相談しながら進めるようにしてください。
まとめ
冷却塔(クーリングタワー)の中には、冷却機能の中心となる充填材が設置されており、これによって外の空気と水とを接触させて冷却水を冷やすようになっています。
この充填材はプラスチック製で耐用年数は7年ほどありますが、大気中や水の汚れが付着した場合には耐用年数前でも冷却機能が低下してしまいます。
この充填材が汚れて冷却機能が低下した場合には、専門業者に相談して清掃するか、それができない場合には充填材そのものの交換をすることになります。
今回は、充填材の交換の方法についてご説明しました。
ただ、充填材の交換はかなり難しい面もあるため、まず専門の業者に相談されるのがよいでしょう。
空研工業株式会社では、充填材の交換や清掃についても様々なご相談に乗れますので、ぜひお声掛けください。