冷却塔は制御して稼働させなければならない!清潔に使うために薬注装置も必須

冷却塔(クーリングタワー)を効率良く稼働させるためには的確な制御が必要です。
しかし、一体どのような制御方法があるのか、制御をすることでどのような効果があるのかなど知らない方も多いでしょう。

今回は冷却塔の制御について、制御方法や仕組み、役割などを説明していきます。
加えて、制御に必要な水質管理装置によるメンテナンスについても紹介していきます。

冷却塔(クーリングタワー)の制御とは

冷却塔(クーリングタワー)は一般的に室外にある機器ですので、その出口温度は外気の湿球温度によって左右されます。

春や秋などの比較的過ごしやすい季節は冷却水の温度も問題ない温度に保たれていますが、真冬になると寒冷地では冷却水が凍結してしまうこともあります。
トラブルを避けるためにも設計条件と大きく異なった季節に備えてしっかりと対策をとり、冷却塔を適切に制御していくことが必要です。

特に対策をとらずに使用すると上記のトラブルに加えて、過剰に冷却してしまったり、外気温が氷点下を下まわると冷却塔自体が凍結してしまったりすることさえあります。

冷却塔を制御する方法はいくつかありますが、その一つとして挙げられるのがファンの発停制御です。
出口水温にてファンの回転数を制御すれば冷却水の蒸発が抑えられ、あわせて冷却能力も制限できます。

しかし、何回もファンモーターの発動・停止を繰り返すと、ベアリング等への負荷が大きくなり耐用年数を縮めることもあります。

そのため、水温が○度まで上昇したらファンの運転を再開して、△度になったらこれ以上温度が低くならないよう停止するなどあらかじめ設定している場合がほとんどです。

近年、熱源機の効率を上げるために冷却水温度を能力いっぱいまで下げて運転する方式も取られています。

冷却塔(クーリングタワー)から出る白煙について

排出された水蒸気が結露し、まるで冷却塔(クーリングタワー)から白煙が上がっているように見えることがあります。

あまり目立たない程度に白煙が上がっているのであれば問題ないものの、ある程度大きい冷却塔だと立ち上る白煙の量も多くなってしまい、周囲の方々を不安にさせてしまうこともあります。

特に湿度の高い雨の日や寒さが厳しい冬などはこの白煙がはっきりと見えるため、夜間に火災と間違えられてしまうなどのトラブルが発生しています。

冷却塔から出る白煙についてはこちらの記事で詳しく説明しています。

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そもそも冷却塔(クーリングタワー)とは

さまざまな機械や冷凍機を使うと、冷却水の温度は上昇します。
この温められた冷却水を再び元の温度に冷やし循環して使用できるようにするのが冷却塔(クーリングタワー)です。

冷却塔は冷却効果が高く、また安価に冷却できるため、大規模な工場だけでなく、身近なところでは商業施設などでも使われています。

たとえばビルの空調設備の熱源機(ターボ冷凍機や冷温水発生機等)、化学やセメントなどの工場設備で使用されています。
デパートやビル内の飲食店などに入ったときに夏は涼しく快適に過ごせるのは、冷熱源に加え冷却水を冷やしてくれる冷却塔があるおかげと言えるでしょう。

冷却塔の中では冷却水というものが使用されていますが、外気の湿球温度に左右されてしまうため、夏と冬では異なる温度になります。

そのため適切に制御し、特に冬期に冷房が必要な建物は注意が必要です。

似ているようで違う冷水と冷却水

字面が似ており、さらにどちらも冷えた水であるため、冷却水と冷水は混同されやすいです。

しかし両者には明確な違いがあります。
冷水(12℃⇒7℃)は冷凍機で冷やされた水のことですが、冷却水(37℃⇒32℃)は冷却塔(クーリングタワー)によって冷却された水です。

冷却塔(クーリングタワー)制御の役割とは

すでに述べてきた通り、冷却塔(クーリングタワー)を適切に稼働させるには適切な制御が必要不可欠です。

また、地球温暖化が問題視されつつある現代では、制御することなく稼働させるのは消費電力の無駄を招きエコではありません。

一方、冬のように気温が低い季節に、そのまま運転すれば冷却水の温度も設計値以上に下がります。
しかし、冷却水の温度を設計値以上に下げる必要がなければ前述の通り、ファンの発停を制御することで消費電力の削減につながります。

冷却塔(クーリングタワー)を制御できれば省エネ効果も期待できる

環境保護の意味もありますが、冷却塔(クーリングタワー)を的確に制御できれば省エネになり、結果として金銭的な無駄の削減にもつながります。

それでは、冷却塔を制御する方法について説明していきましょう。

冬なら冷却塔を上手に活用すると省エネにもつなげられる

地球温暖化が問題視されるようになったのはここ30年のことです。
原因は様々ありますが、その一つが温室効果ガスです。

無策のまま温室効果ガスの排出を続けていると地球温暖化はどんどんと進み、やがて人間だけでなくこの地球に生きるものすべての生物にとって生存が困難な状況になってしまいます。

そのためにも冷却塔のような大型の機械をいかに制御して無駄なエネルギーを省くかが重要となります。

冬期に冷房が必要な建物は、フリークーリングを行うと大幅な省エネ効果が期待できます。
フリークーリングは外気温が低い時期に冷凍機を使用せず、冷却塔で冷やした冷却水を冷水として活用するシステムです。

冷凍機を稼働させない分省エネに貢献できますが、冷却塔の中でも冷却水が直接外気に触れてしまう開放タイプでデメリットが発生してしまうことがあります。
たとえば、車の排気ガスやその他チリや埃などが混ざっている外気を取り込んだ場合水の質も落ち、それによって腐食や閉塞などのトラブルを招いてしまうことがあります。

外気には不純物が多数含まれているため、とにかく触れさせないようにすることが重要です。
フリークーリングを利用して省エネを目指すのであれば、密閉式の冷却塔を使用し、また腐食などで壊れないように冷却水の管理もしっかりと行いましょう。

インバーターは省エネにつながる機能の一つ

インバーターとは、直流電流や交流電流から周波数の異なる交流電流を発生させる装置のことです。
インバーターはエアコンに使われていることで有名ですが、使用例はこれだけに留まらず、現在では蛍光灯やエレベーターなどでも活用されています。

そして、このインバーターを活用した制御方法が冷却塔で使われることも増えてきました。

たとえば出口水温に合わせてファンの稼働を制御した場合、都度オンとオフを繰り返していると電力消費が多くなり効率が悪く、また温度の制御自体も安定しません。
しかし、インバーターを使うことによってモーターの回転速度を柔軟に制御できるようになります。

完全に止めたりフルパワーで動かしたりするのでなく細やかに調整すればその分消費電力の無駄も減ります。
しかし、運転周波数によっては共振現象が起こってしまうことがあるので注意が必要です。

台数を制御しても省エネになる

大規模なビルや工場の場合、複数の冷却塔を使用しているかもしれません。
気温や天候によってはそのすべてを稼働させる必要はなく、状況に応じて運転台数を減らせばその分消費電力を削減できます。

冷却塔の台数が多い施設ほど、何台停止させて調整できるかの制御が細かく行うことができ、非常に効率的です。
この制御方法はほかの方法と組み合わせて行うこともできます。

冷却塔(クーリングタワー)の仕組み

大きな熱を帯びたものをそのまま捨ててしまうのは効率も悪いですし、コストの面から見ても良くありません。

冷凍機や空調エアコンなどさまざまな機器で、熱を持ってしまった冷却水を再度冷やしてあげるほうが効率が良いです。
このような観点でも冷却塔(クーリングタワー)は様々な機器に使用されています。

以下からは、冷却塔の仕組みについて紹介していきます。

冷却塔には種類がある

丸型や角型など、冷却塔はさまざまなものがあります。
また、そこから外気と直接触れる開放式冷却塔、あるいは外気と触れない密閉式冷却塔などさらに分類することも可能です。

冷却塔(クーリングタワー)はシステム全体で制御しなければならない

冷却水を外気と直接接触して冷やす開放式冷却塔の場合も、直接接触しないで冷やす密閉式冷却塔の場合もシステム全体で制御するように動かなくてはなりません。

まず、風量を調整し、状況によっては冷却水の循環水量も調整します。

一部分だけを見るのでなく冷却塔(クーリングタワー)を俯瞰して捉え、すべてにおいて効率が良い状態で使用すればコストを抑えられ、また冷却塔自体の寿命を延ばすことも可能です。

冷却塔(クーリングタワー)を制御する方法について

以下では冷却塔(クーリングタワー)を制御する方式をいくつか紹介していきます。
どのようなものがあるのか、ぜひ参考にしてください。

循環水のバイパスを制御する方法

循環水の入口と出口の間を貫通するバイパス回路がある場合、冷却塔はそのときの状況に合わせて水量を調整することが可能です。

冷却塔でしっかり冷やされる水と手が付けられていない水が出口部分で混合され、適温になった状態で機器へ入っていくという仕組みです。

その際、出口の水温を測り、それを元に混合具合を調整します。
本来流れる水が滞ってしまうと冬場は凍結してしまうおそれがあるため注意が必要です。
ファンの運転制御も同時に行い、凍結を防いでおく必要が出てきます。

ファンの運転でも冷却塔の制御ができる

ファンは常に回し続けるのではなく、天候や気温を読んで都度操作して制御することが重要です。
出口で温度を測り、循環水が現在どのくらいの水温になっているかを把握しつつ、それに合わせて動作を制御します。

しかしスイッチのオンオフは機械への負荷が少なからずあり、何度も繰り返していると故障の原因になりかねません。

そのため精密にオンオフを切り替えるのでなく、モーターに負荷をかけない程度に操作する必要があります。

なお、インバーターを組み込んでいれば完全にオンまたはオフにするのでなく動作の程度を調整することが可能です。

冷却塔のファンの制御についてはこちらの記事もご参照ください。

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様々なところで制御に使われているインバーター

上記で説明した通りインバーター制御を行うと、それによって回転数を制御することができます。

インバーターはモーターの回転数でなく周波数を制御しているのです。

ただオンオフを切り替えるよりも制御による効果も高く、さらに省エネにもつなげることも可能です。

しかし、ファンをインバーターで制御する際にはいくつか注意しなくてはなりません。
たとえば、インバーターを使用していると共振現象が起こってしまうことがあります。

これは冷却塔の振動数とインバーターの周波数が一致したときに起こり、防ぐためにはその周波数をジャンプさせなくてはなりません。

冷却塔(クーリングタワー)の水質管理装置について

冷却塔(クーリングタワー)はそのまま使用していると、特に開放式の場合は外気から汚れが入ってきて汚くなってしまいます。

そのままの汚れた状態で使用していると衛生面としても良くないため、しっかりときれいにした状態で使用しなければなりません。

また場合によっては冷却塔内で藻が繁殖し、それによって部品が腐食してしまうこともあります。
修理には高額な費用がかかってしまうので、壊れる前に汚れへ対処するのが基本です。

そこで活躍するのが水質管理装置で、これを使えば冷却水をきれいに保ったまま使用できます。
水質管理装置には、自動ブロー装置・薬注装置・ろ過器などがありますがここでは自動ブロー装置と薬注装置について説明します。

自動ブロー装置

元来水は電気伝導度が低く電気を通さないのですが、含まれている不純物によって通電します。
どれほど通電するかは不純物の量によって決まるため、電気の通りやすさで水の汚れ具合を把握することが可能です。
この仕組みを活用したのが薬注装置内の自動ブロー装置です。

まず電気の通り方の上限値を設定し、それをオーバーすると自動ブロー装置が作動し、電動バルブを開いて新しい水を注入します。
あらかじめ設定した下限値に達すると電動バルブが閉じるため、必要以上に水を捨ててしまうこともありません。

人間が何回も冷却塔の様子を見るよりも手間がかからず、簡単に水の必要以上の濃縮を妨げることができるため非常に有用な装置です。

薬注ポンプ

冷却水の水質を保つために薬品を注入する装置が薬注ポンプです。
注入する薬は濃すぎても薄すぎても悪く、一定でなくてはなりません。

一般的には、ポンプにはタイマーが付属しており定期的に薬品を投入しています。
そのため、薬注ポンプはまず冷却塔内の水量を測定し、それに合わせて注入量を調整します。
定期的に水質検査を行うことにより、タイマー設定を変更するのがお勧めです。

薬液タンク

その名の通り薬液タンクは薬液を溜めておくタンクです。

一般的には薬注ポンプと一体型になっています。
タンクは小さすぎると薬剤を頻繁に補充しなくてはならず、大きすぎると今度は過剰設備になるので、冷却塔や月々の薬剤使用量に合わせたサイズのものを使う必要があります。

冷却塔の薬注装置についてはこちらの記事もご参照ください。

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長く正常に冷却塔(クーリングタワー)を使用するには掃除も大切

冷却塔(クーリングタワー)は決して安価なものではなく、使えなくなったとしても簡単には買い換えられません。
だからこそ一つのものを少しでも長く使うべく、定期的に掃除を行うことが求められます。
水質管理装置を使用しているからと油断せず、人間の目でも確認しましょう。

まとめ

冷却塔(クーリングタワー)の中の冷却水を適温のまま年中使い続けるためには、様々な方法によって制御を行う必要があります。

また、冷却塔には直接外気と触れる開放式冷却塔と外気とは触れなくても良い密閉式冷却塔、そして冷却水と風を上下から当てる丸型と垂直に当てる角型などさまざまな種類があります。

各々によってメリットとデメリットが異なるので、用途や使用条件などを見極めて選びましょう。
加えて、冷却水を清潔に使うためには薬注装置も一緒に使い、定期的に掃除することも重要です。

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